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アルバム“ twin fiddles ”より⑤ (毎週水曜日更新)

【鈍色の空と十字架と・・・】

きのうおばさんに逢ったよ
きみが元気だと聴いて ぼくも嬉しい
あの娘は もう5歳になるんだね

おばさんはいわなかったけれど
きみとあいつが別れたって 風のうわさで聞いた
あの娘も ちいさな胸を痛めたことだろう

夜明けまえに 丘のうえの教会へ行った
主に祈ることしか ぼくにはできないから
鈍色(にびいろ)の空に それでも十字架は清澄だった

おばさんは遊びにおいでといったけど
本心じゃないことは わかっている
だからぼくの知ってるきみは あの日のまま

きのうおばさんに逢ったよ
きみが元気だと聴いて ぼくも嬉しい
あの娘は もう5歳になるんだね

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-31 02:01

『きっとじぶん自身に宛てた手紙』⑤ (毎週月曜日更新)

『マール・ハガードの歌を聴くと、わかる。
多すぎる言葉はいらないのだ。必要なのは、
最小限の言葉だ。』(――長田弘)


【そして仲間たちへ】

みんないい奴ら
みんないい娘たち 
みんなでこさえた 
偉大なる一日

あとで、ずっとあとで思い出す
人生の最良の日に数えられる
この日に――。

じぶんの半分の歳の子たちに負け
じぶんたちより下手な奴らにも負け

ひざのすり傷しみるけど
アバラがじんと痛むけど
なぜかうれしい体の悲鳴

1勝3敗、第6位
それでええじゃない
みんないい笑顔
みんなありがとう

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-29 22:34

『ユージンと陶器職人』④ (毎週金曜日更新)

わかい陶器職人と陶器のようにうつくしい女とのあいだには
ふたごの息子と娘とが誕生した。ふたごの息子と娘とは、木
漏れ日の愛情にはぐくまれ、すくすくと成長した。

森のような庭園を夢みる、陶器のようにうつくしい女が、草花
の手入れにいそしんでいるかたわらでは、ふたごの息子と娘
とがかけずりまわり、あかるいはしゃぎ声をあげていた。

そんな光景をみながら、ついにわかい陶器職人は、妻にも
負けぬほどの世界一うつくしい花びんを焼きあげたのだった。

けれども、わかい陶器職人は、その花びんを焼きあげたそば
から決めていた。『この花びんは誰にも売らずに、妻が手いれ
した、すてきなダリアの花をかざろう』と。

それからもわかい陶器職人は傑作をうみだした。はるか遠い
国の王様からも注文がはいるほどだった。それでもなぜか、
わかい陶器職人のこころは満たされることがないのだった。

おだやかなある日、たいした巨木のしたで、わかい陶器職人
は、トトの胸もとをさすりながら、陶器のようにうつくしいわが妻
と、そのかたわらで眠い目をこする、ふたごの息子と娘とをみ
つめていた。

『そうだったのか!』おもわずわかい陶器職人はうわずった。
目のまえにしなだれていた枝葉がざわわと揺らめき、トトは
『うぉんっ、うぉんっ』とふたつ元気に吠えると、ちぎれるので
はないかと思うほど尻尾をふってみせた。

仕事にとりかかったわかい陶器職人の顔には、これまでに
ない精気がみなぎっていた。『きっとあすの朝には』とわかい
陶器職人はひとりごちた。『チェスの駒ほどの、みごとな水飲
み場が完成することだろう・・・』

やがて、ふたごの息子と娘とは、森のような庭園でトトを追い
まわしあい、思わず笑い声をもらさずにはいられないことだろ
う。そうして、チェスの駒ほどもみごとな水飲み場で、かわいた
のどをうるおすのだ。

わかい陶器職人と陶器のようにうつくしい女はそっと寄りそい、
そよそよとしなだれそよぐ枝葉に見守られて、しずかな笑みを
交わしあうのだろう。
(完)

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-26 01:04

【緊急予告】

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                                               (写真=Az)

ほんとうに必要な最後のステップを踏めないゴールキーパーと、あくまで点を取る努力を続ける勇気をもたねばならないストライカーの、週に一度のPK対決(文章×写真)・・・2月より新連載決定!
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by momiage_tea | 2007-01-24 21:13 | 写真

アルバム “twin fiddles” ④より (毎週水曜日更新)

【一期一会】

泣きはらした目で きみはいった
「宝くじで100万円当たったの」
咄嗟についてでた きみの嘘に
ぼくは おどろいてみせたっけ

新潟からの 長距離バスに きみは駆け込んだ
行き先はどこでもよくて きみはそうして ここへやってきた

泊まる宿も 100万円もないくせに
「日本中を旅してまわってるの」
というきみは 仙台駅のバスプールで
不安げに 立ち尽くしていたっけ 

工場しかない 場末の港町には きみが求めるものは 
なにもないだろう ぼくが連れてくよ 信じてくれるのなら 

助手席で 笑い転げたあとで
「わたし捨てられちゃったの」
きみはいった 頬をつたう涙かくし
窓の外みて つぶやいたっけ

きみの悲しみに つけいろうとは思わない ぼくはただ
きみの笑顔をみたかっただけ そしてきみは ぼくを信じてくれた

照れくさそうに 笑顔をつくろって
「このまま一緒に居てくれる?」
きみはいった あの満月の夜
きみを救えるのは ぼくだけだった

きみは笑った そして笑った いつまでも手を振りながら
悲しみを忘れるためでなく 理解しあう気持ちを取り戻したから 

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-24 20:22

『きっとじぶん自身に宛てた手紙』④ (毎週月曜日更新)

●尾崎四郎の名文から。(『相撲を見る眼』~浜松河岸~より)

  “――そのとき場内の広場は高潮した雰囲気の中からはなれることを
   惜しんで立ち去りかねている人たちによって埋まっている。私もいつ
   の間にか群集のあいだに立って警官のかためている入口の方を眺
   めていた。すると前にいた群衆の列がざわざわと前に向かって動き
   だした。場内からは警官にまもられた双葉山が優勝旗を肩にして出
   てきたのである。いつの間にか紋服に着かえた双葉山は十一日間
   の土俵の印象を、あかるく浮きたつような表情に刻みつけているだけ
   に、唯、凛としたかんじだけでなく、悠揚迫らざる落ちつきの中に堂々
   と輝くばかりの色彩を点じていた。”

 
 【宛名なし。思い当たる節のあるみんなへ】

 遠くから見るあなたも、近くからみるあなたもおおきかった。すべてが。け
 れども、あなたのビッグ・スマイルは間近でにかぎる。憎まれ役の大横綱。
 あなたがわたしたちに返してくれるその笑顔に、ぼくはそうしなければなら
 ない誰かにかわって感謝します。ありがとうございました。

 横綱朝青龍の優勝パレードを見送ったあとで、ぼくはJR両国駅に向かう人
 の流れに逆らって、大江戸線の両国駅までゆっくり歩いていった。ひと気
 もまばらな国技館の照明に、夜風にたなびく幟(のぼり)がうっすらと浮かび
 あがっている・・・・・・。

 あと何度、ぼくはこうして祭りのあとの侘しさを味わうのだろう。きのう(土曜)
 ぼくはひとりの同僚を失った。依然として仲間であることに変わりのない彼
 はしかし、ぼくの前から去ってゆく。きつくにぎり返す彼の握手がすべてを
 物語っていた・・・・・・。

 きみを呼び出して、喫茶店の隅でぼくが「東京へ行くのだ」と告げたときの、
 きみの表情を、いまぼくはここから巣立ってゆくあの彼に、見せてしまった
 のかもしれない・・・・・・。

 あるいは、ピーター・ラファージがアルバム(Sings Women Blues)に
 遺したように「ぼくのそばを通り過ぎていった、ぼくが結ばれたかもしれなか
 った、たくさんの少女たちの名を、ぼくはここに書きとどめることはしない」。
 なぜなら、あなたはぼくの気持ちをもう知っているから・・・・・・。
 
 雪ではなく雨が降っている。しずかな雨だ。屋根をツタツタ鳴らして、大寒
  だというのに春隣を思わせる希望と不安にあふれた雨音に、ぼくはまぶた
  がおもくなる。今宵、ぼくはしずかに、雨のように眠る。みんなおやすみ。
 ■
(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-22 12:21

『ユージンと陶器職人』③ (毎週金曜日更新)

ユージンはしっかりと根をはってみせた。幹をふとくして
枝をのばす。葉っぱはこれでもかと生い茂らせてみせた。

それはほんのつかのまのできごとだった。わかい陶器職
人は窯の番にあけくれくたびれ、つい、うつらうつらとした
その一瞬のことだった。

あけの明星がうすらいで、早起きの小鳥たちがいっせい
にさえずりだすと、わかい陶器職人の鼻っつらをくすぐる
ものがいた。

はっとして、わかい陶器職人が目をぱちくり覚ますと、雨
ざらしだった窯のすぐそばに、たいした巨木がたっていた。

『どうだい、樹齢300年のアケボノスギより立派な木じゃ
ないか!』そういってわかい陶器職人は、じぶんの鼻っつ
らをくすぐる枝葉と握手した。

そのたいした巨木の名を、わかい陶器職人はしらなかった。
けれども窯を雨風からまもってくれる屋根のような巨木を、
わかい陶器職人はすぐにも気にいってたいそう大事にした。

巨木のかたわらを離れようとしない、誠実そうな番犬の目を
したいっぴきの犬ころもまた、わかい陶器職人は気にいった。

『きみは平和主義者だろう?』わかい陶器職人はいった。 
『ぼくにはわかるんだ。そうだ。名まえはトトがいい。どうだ
ねトト?』

わかい陶器職人がそういうと、誠実そうな番犬の目をした、
平和主義者のトトは、あまりのうれしさに武者震いしたあと
で、『うぉんっ、うぉんっ』とふたつ返事をしてみせた。

ほどなくして、陶器みたいに美しい女と恋におちたわかい
陶器職人は、女とふたりして巨木の足もとに腰をおろし、
将来の夢をかたりあうのだった。

トトはそっと寝たふりをして、わかい陶器職人と陶器みたい
に美しい女の会話をこっそり盗み聞いた。

『こいつぁにぎやかになるぞ』トトは思った。そうしてそれが
現実のものとなるのにそう時間はかからなかった。

それこそ都会から帰ってきたひとりの男が、たいした巨木
になったぐらいのはやわざだった。
(つづく)

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-19 23:59

アルバム “twin fiddles” より③ (毎週水曜日更新)

【浩ちゃんの唄(ブルース)】

 積荷を崩しちまっても おやじさんは許してくれた。
 でもね 娘を殴ったときはべつだった。
 あの娘とも おやじさんとも それっきり。

 職を転々としたがぁ ポンコツ車はそのままさ。
 母ちゃんは言ったっけね。
 「おまえときたら ポンコツ車とうりふたつ・・・」
 まったく うまいこというもんさ。
 そうさ おいらは「喰いっつぶし」さ。

 グラブは磨いているよ。 土の匂いも忘れちゃいない。
 でもね エースで四番はむかしのことさ。
 かっ飛ばした白球も 幼なじみ(キャッチャー)も いまいずこ。

 兄貴は料理人なって家をでて
 弟もここを巣立っていったっけ。
 うん 立派な歯医者になったんだ。
 おいらうまく言えないけれど そうさね
 たまにゃ みんなでキャッチボールしたいよね。
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-17 00:11

『きっとじぶん自身に宛てた手紙』③ (毎週月曜日更新)

 【スガワラマコトくんへ】

 ぼくがきみと壁のぼりを楽しんでいたとき、ぼくはふたりで、
 きみもふたりだった。ともに人生の伴侶を得ていたけれど、
 その違いは紙切れを役所に提出していたか否かだった。

 そのときぼくはそこに紙切れの厚さほどの違和感も感じて
 なかった。ぼくはあのときと変わらずふたりだけれど、きみ
 が送ってくれた年賀状に写るふたりは、きみではなく、きみ
 の子どもたちだった。

 ぼくはふたりのままで、きみは4人になった。ぼくには想像
 もつかない。きみがした苦労をぼくが背負いきれるかなど。
 けれども、きみがした苦労は、ふたりの子どもたちの笑顔
 をみれば、正しかったのだとわかる。

 悪戯な、けれどもまったく無邪気な男の子と、控えめだが
 真の強さを微笑に湛えた女の子。そのどちらにも、きみの
 面影が覗いている。そうだ。きみはあのときてっぺんまで
 登っていった。握力を失って落っこちたのはぼくだった。

 ぼくはあのときの壁を制覇できるかわからない。それでも、
 きみに笑われない程度のことは成し遂げてみせるつもりだ。
 よっぽど上にいるきみが、ぼくを気にかけてくれてうれしい。
 心からありがとうと言おう。かたい握手をおくる。
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-15 23:56

『ユージンと陶器職人』② (毎週金曜日更新)

『ほんのひとむかしまえには』とあさい眠りのなかでユージンは
ひとりごちた。『幼なじみや学校のともだちと連れだって、ぼくら
はあの庭園で朝な夕なに駆けずりまわったものだ』

『さいしょは息をひそめていたけれど、しだいに声はうわずり、
やがてぼくらのはしゃぎ声はあの屋敷にもとどいたことだろう』

『それでもむく毛の番犬は、はなからぼくらを取りしまる気は
なかったし、老主人もぼくらをとがめることはしなかった』

『きっとあの老主人はしっていたのだ。庭園にかかせないのは
沈黙で、それよりも必要だったのが沈黙をうちやぶる、子ども
たちのはしゃぎ声であることを』

ユージンはじぶんでも気づかぬうちに涙をこぼした。そうして
失われたものが、庭園に忍びこむためのレンガ塀やかわいた
のどをうるおす水のみ場や、むく毛の番犬のすがたばかりで
はないことを悟った。

なかんずくユージンは、少年の日の無邪気なはしゃぎ声を
かいていたのだ。

ユージンはほんのひとむかしまえに大都会へと飛び出してい
った。しかし、コンクリートだらけの地面ではユージンが根を
張りめぐらすすき間はなかった。みるみるうちにユージンの
こころは栄養をなくしてこり固まっていった。

『土地への愛着は、どれだけこころの視野のひろがりをその
土地にもてるかだ。どれだけこころをゆるせるかで、ひとは
その土地にずっしりと根をはることも、風にふかれることも
できるのだろう』

はたしてユージンは、この土地――少年の日をすごした故郷
に根をはりなおすことを誓った。するとこり固まっていたこころ
がすっと解きほぐされるのを胸に感じるのだった。

ユージンも相棒のトトも眠りからさめていた。ユージンはトト
の胸もとをさすりながら語りだした。

その声はメラメラ、バチバチと燃えさかる炎のいさましさに
かき消され、わかい陶器職人にはきこえなかった。

『トトよ』ユージンはいった。『この土地には子どもたちの
はしゃぎ声がたりない。さっそく取り戻そうじゃないか・・・』
(つづく)

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-01-12 23:23


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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