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絵本の効能 (7月8日)

ちょいと絵本でも覗いてみたい衝動にかられながらも、そこを避けずにはいられなか
ったものだ。しかし最近では何の気兼ねもなく書店の児童書コーナーをうろついて回
っている。キッズや赤ん坊を抱いたお母さんとすれ違っても、「あの子にはどんなの
がいいかなぁ」なんて平和ボケした表情のひとつでも浮かべていれば、ボクもそれな
りの家庭持ちの男にみられる歳になったというわけだ。

ボクがはじめて見た絵本の記憶は、五味太郎さんの作品だったのだと思う。サルや
ゴリラやチーターに人間の男の子たちが、物を食べては消化してウンチをするまでを
描いた絵本であった。ボクは幼い頃からたくさんの絵本みてきたわけではない。むしろ
絵本に親しむ機会は稀であったと思う。そんなボクが近頃やけに絵本じみているのは、
フランスのポスター職人、レイモン・サヴィニャックによるところが多い。

「ユーモア」という処方箋を毎日服用することだ、と彼はポスター創りの(そして人生の)
秘訣を語っているのだけれど、例えば詩人の長田弘さんも絵本作家、モーリス・センダ
ックの生み出した「リアリー・ロージー」という飛びっきり元気な少女の姿を借りてこんな
ことをいっているのだ――。

「つらいこと、悲しいこと、やりきれないこと。いったいなんて人生なのかしら。まったく
人生は頭痛ね。頭痛によくきく薬をちょうだい。モーリス・センダックを一粒――」と。
ならばボクの目指すものは薬剤師であろうか? そのうち必要になったらご用命頂け
れば幸いである。来年には素敵な万能薬を発表できるであろう・・・。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2005-07-08 09:51 | 石垣ゆうじ

つむじ曲がりの夏 (7月7日)

6月の終わりに、ボブ・グリーンが著した『オール・サマー・ロング』上下巻(新潮社)を
読破した時点でボクの夏は終わってしまった。邦題でそれぞれ『夏を追いかけて』と
『夏がいっぱい』と題されたこの小説は、高校を卒業してから17年目の同窓会に出席
したかつての仲良し三人組が、もう一度青春の日々を取り戻そうと「ひと夏の旅」に出
かける話だ――。

この作品を読み終えたら「ボクの夏」も始まるのだ! そう勝手に思い込んでいたもの
だったが、今となっては涼しげなジョージ・ストレイトのカントリー・ソングに耳を傾けて、
梅干しののった冷やしうどんでも啜っていると「ああ、夏はもう帰らぬのだな・・・」などと
シュンとしてしまうのであった。

織姫と彦星だけは、梅雨空にもめげず、遥か銀河の彼方で「星迎」の七夕の夜をラヴ
ラヴで過ごしていることであろうが、仙台生まれのボクにとって七夕といえば、8月の
「みちのく三大祭」のことであるから、それもいまいちピンとこない。だが、それももうどう
でもいいことである。夏は終わったのだから。

秋の夜長は読書である。ピート・ハミル著『ニューヨーク物語』、グレイス・ベイリー著
『人生のちょっとした煩い』(以上、文藝春秋)、エドマンド・ホワイト著『パリ 遊歩者の
まなざし』(DHC)、そして、ペーター・バヘーア著『眠る前に読む短いエッセイ』(草思社)
を一気に仕入れてきた。

読むのが異様に遅いボクだから、これらの本の頁をめくり終わる頃には、ほんとうに
夏は終わっているのではないか? 以前、師匠のターザン山本さんが夏に聴くクリス
マス・ソングの愉しさを自分のエッセイに書いていたものだったが、つむじ曲がりのボク
らにはそのぐらいでちょうど良いのかも知れぬ。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2005-07-07 11:08 | 石垣ゆうじ

終わりと始まりのはざまで・・・。(7月6日)

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このやるせなさ。洗濯をした日は何事もうまくいかない。そういうことになっているのだ。
いまから樋口徹写真展『緋い場所』を見るために銀座へ出かけてくる。うっとうしい迷信
を自ら演出するためにボクは、刑務所あがりの男が、その足で立ち寄った居酒屋の女
主人に手をかけた場所――コノ世ノ“最期”ノ椅子ハアノ世ノ“始マリ”ノ椅子――を拝み
にいく。(・・・・・・それから5時間経過)

その主人を失った廃屋は不気味な気配すらなく、ただ無惨に朽ちるのを待つだけだ。
「オカズガオオイ」――それが最期の食卓の最期の言葉だったという。東北の山里で
長年連れ添った老夫婦の、それまでの日常の在りようが手に取るように伝わってくる。
それだけに哀れみや痛みを越えて、ボクはその写真を見てクスリと小さな笑い声さえ
漏らしてしまうのだった。

ボクは自分がナオミに殺られるところを想像してみた。「ホカニナンカナイノ?」ボクが
いうと、彼女は烈火のごとく怒りを体内に宿し、みそ汁に入れる豆腐のパックを開ける
のに握ったナイフを、ボクの目の前にかざしてみせるのだった。怒っても怖くない彼女
にしてはめずらしく過剰な意思表示だ。ボクはそんな脅しには動じず「オカズガスクナ
イ」と更に吐き棄てる。――それがふたりの最期の食卓の最期の言葉になるのだ。

銀座から池袋に戻り、馴染みのカレー屋に入った。店内に映し出される摩訶不思議
なインド映画にボクは気を奪われた。次に入った喫茶店では「ちょこっとだけ」といい
つつ、いつまでも電子郵便のやりとりに耽こむボクがいた。気づけば、向かいのテー
ブルで蔑ろにされたままのナオミが殺意に満ちた鋭い眼光でこちらを睨んでいた。

あの写真展の情景はぼくにとってはむしろ身近なものなのかも知れない。世の男性
諸君も気をつけて欲しい。まずは他人の忠告に耳を傾けることから始めてはどうだろ
う? それが人生遅延の秘訣になるのだ。

(文=石垣ゆうじ)
(絵=トモッと)
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by momiage_tea | 2005-07-06 23:45 | ゆうじ × TOMOt

「トニー滝谷」村上春樹著   by TOMOt

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孤独ではないということは、彼にとっていささか奇妙な状況であった。
孤独でなくなったことによって、もう一度孤独になったらどうしようという恐怖につきまとわれるようになったからだ。
ときどきそのことを思うと、彼は冷や汗が出るくらい怖くなった。




       『トニー滝谷』村上春樹著    絵/TOMOt
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by momiage_tea | 2005-07-05 00:25 | TOMOt

ようこそ、サボテン・ブラザースよ!(7月4日)

サボテンを家族に迎えることにした。サボテンはサボテン科の多肉植物の総称の
ことであるから、同じイガグリ頭のものでも緑色の棘の鋭いものからオレンジ色の
イソギンチャクみたいなのまで様々である。白いヒゲを生やして、なんだかお爺ち
ゃんみたいになってるサボテンもいれば、民芸品の手鞠のように鮮やかな模様で、
そのまま何処かへ出かけて行ってしまうのではないかと思うほど「よそ行き」風な
お洒落さんもいる。

ちょうどそんなサボテンの仲良しさんが4、5人集まった鉢植えを神保町の園芸店
で見つけてしまった。1,500円程でその子達の里親になれるのだ。彼らは話しか
けられると喜ぶらしく、いかにも話しかけたくなるイジらしい佇まいでこちらを見つめ
返してくるのであった。よしよしわかった。「小さな親切、大きな下心」である。君たち
にはたっぷりと「チクリンパワー」でお返しをしてもらうよ!

(中南米の原住民は、病気になるとサボテンの原生林で2、3日寝て過ごすという。
それだけサボテンが発散するチクリンパワーには不思議な癒し効果があるらしい。)
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サボテンマン...微妙かなぁ・・・
■□
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by momiage_tea | 2005-07-04 23:29 | ゆうじ × TOMOt

ジョージ・ストレイトの夜(7月3日)

秋のはやい訪れ。移動サーカスの巡業者が運んでくるひと夏の終わりの匂い。
枯れて実る秋の炎。夏の燃えカスは秋の真実。やがて北風が灰をふり払うだろう。

スティールギターの淋しげな泣き声。ホンキートンクバーの喧騒。空のビール缶。
挿まれたままのしおり。鏡に書かれた口紅文字――「誓いは破るためにあるのね」

夏の滾りをクールにやりすごそう。いまはもう秋。帰らない日々にとってのあした。
そこにたどり着くための歌を――。ここに留まるひとの歌を――。あなたは歌う。

年寄りトロルをからかった夏の日は、誰しもが若かった。捲られぬカレンダーと、
遠のく記憶をまざまざと甦らせる草いきれ。放り出せぬ友情と色褪せし恋――。

擦り切れることをおそれぬブルージーンみたいに、使い古された言葉に名誉回復を。
誰も知らない道の、誰も知らない花の香りを、町外れで聴こう。そっと耳を澄ませて。

GEORGE STRAIT(ジョージ・ストレイト) "SOMEWHERE DOWN IN TEXAS"
「完璧という言葉を疑いたくなければ、このアルバムを聴け。彼がすべてを請け負っ
てくれるから・・・『サイドバーン・トリビューン』紙――★★★★★」

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by momiage_tea | 2005-07-03 02:02 | 石垣ゆうじ

.....優雅な休日.....by TOMOt












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  □■□
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by momiage_tea | 2005-07-02 02:30 | TOMOt

『も』は もみあげ の『も』   by トモッと

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ミレルは団長の指示をはじめて拒みました。

 「さぁ、行けミレル! 行くんだ!」

ミレルがこの河を渉るのはたやすいことでした。

 「わしのいうことが聞けんというのか!」

ミレルは団長との日々を思い返しました。

 「打つぞ、ミレル! 行かんというならばな!」

ミレルは鞭で打たれたことばかり思い出しました。

 「このうすのろめ! こうだ!」

ミレルはそうして、また打たれました。

 「こいつめっ! こうだっ! こうだっ!」

ミレルは鞭打たれたまま、ロシアに降る雪のように泣きました。

 「はぁ~っ、はぁ~っ」団長はみにくく汗をかきながらも・・・。

 「このバカ者がっ! こうだっ! こうしてやるっ!」 と、またミレルを打ちつづけました。

ミレルは団長の心があまりに盲目なので、哀しくてもう一度泣きました。

 <どうして彼には、この河に詩がないことがわからないのだろう?>
 
ミレルはイタリアの作家スザンナ・タマーロの言葉をつぶやかずにはいられなかった。

 『せせらぎは鉄の匂いがする。大地の血の味がする』

なんだと? 団長はいいました。 けれどもミレルは答えませんでした。

 「ど、どこえ行くんだミレル! そっちじゃない! 戻るんだミレル!」

ミレルは決めました。

 「行くんじゃないっ! 戻れっ! 行くなっ! ――ミレルっ!」

その河のせせらぎで水浴びをすれば、きっとカラダのキズも消えるだろう。

 「たのむ行いかんでくれ! わしをひとりにせんでくれっ、ミレルッ!」

ミレルはまるで闇のようなみどり色の河と、団長に別れを告げました。

 「行くな、行くな、行かないでおくれミレル・・・。ミレルっ! このミレルめがっ!」

ミレルの姿はいまや、団長がこれまで見たなかでも一番ちいさなミレルでした。

やがて、団長の目からミレルがいなくなると、

そのひとみには、容赦なくロシアの雪が嵐のようにたたきつけました。



 絵=トモッと
 文=石垣ゆうじ
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by momiage_tea | 2005-07-01 12:09 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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