2006年 08月 04日 ( 1 )

『ある日の手紙』 ⑤

修一くんへ

きみが――怒りや哀しみを拠り所にせざるを得ない境遇
に身をおいているとはいえ――ぼくよりも多くのモノを書い
ている事実に感服する。

とはいえ、つまるところ“どれだけ書いているか”ではなく、
“なにを書いているか”が問われるのだろうと思う。きみは
“なにを書いている”のかね? いや、ぼくはきみを非難
するつもりはない(どこにそんな権利があろうものか・・・)。

きみにはユーモアがあるだろう。おそらくきみはユーモア
を表現するにあたって怒りや哀しみを書き綴っているので
はあるまい。まず動機(怒り・哀しみ)ありき。そうして、期
せずしてユーモアを発揮しているのに違いない。

もしそのことにきみ自身が気づいてないのだとしたら、きみ
はいち早くその才能をものにしたまえ! ユーモアの持ち
合わせこそが、この世をうっちゃる唯一にして絶対の得策
なのだから。

(・・・・・・)ところで、詩人・長田弘さん(――『詩人の紙碑』)
によると、安部公房という作家は「故郷からの逃亡」ではな
くして、「故郷へむかっての逃走」を余儀なくされた、故郷を
もたない、「故郷喪失者の歌うたい」であったそうだ。

幸いにしてぼくには故郷――いずれ地下鉄東西線や幹線
道路に土地を奪われてしまうだろう故郷(仙台)がある。それ
は、たかが感傷としての故郷かもしれぬ。されどぼくは東京
ではなく、我がふるさと仙台の地においてこそ、「故郷へむか
っての逃走」を逃げたいと思うのだ。

「罪がなければ、逃げるたのしみもない」(『砂の女』――安部
公房著)ならば、ぼくは自ら加担してでもその罪を負うことだろ
う・・・・・・。かたい握手をおくる。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2006-08-04 20:45 | 石垣ゆうじ


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