2005年 07月 14日 ( 1 )

くるみパン、あるいは干しぶどうの夜 (7月14日)

デューク・エリントンならどうにかしてくれるだろうとレコード屋へ出向いた。地下鉄
に乗り、そうしてネオンの星降る池袋の街を歩いていると、ビッグバンドへの憧れが
次第に遠のいていくようだ。ボクはレコード屋ではなくカフェーの片隅の安堵に落ち
ついていた。

“詩を書くことは、それが誰であろうと、あなたとしか言うことのできない、人生の特別
な一人に宛てて、わたしのことばを差しだすことである――”詩人・長田弘さんはそう
いった。ならば、いつだってボクの書くものは自分へ宛てた、不幸の手紙みたいに厄
介な戯れ言に過ぎなかったのかも知れない。しかし、ここにこんな詩がある・・・。

“詩というのは、自分への慰めなんだな。誰かに書いたとしても、本質は自分にむか
って綴られた慰めなんだな。最後はいつでも独りなんだな――”詩人の野上シュウ
イチが記した「どんよりポエム」だ。さすがはボクの数少ない理解者――親友である。

さて、ボクはくるみパンを買った。今までこんなことはなかった。けれども、どういうわけ
か、今夜はくるみパンに手が伸びたのだった。くるみパンの夜である。どういう因果か、
メロンパンでもないのにまたしてもレーズンが入っていた。どうしたら彼ら(彼女ら)干し
ぶどうは、自立してレーズンパンと呼ばれるようになるのだろう?

かくしてボクは「ひとかどの存在になりたい」というレーズンの声なき叫びをかじり、飲み
下した。控えめな、日本人の本来あるべき姿の味がした。そうしてちぎったくるみパンの
生地に埋もれる干しぶどうの粒を見つめていると、他人の保険のような人生を生きてい
る自分にほとほと嫌気がさすのだった。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2005-07-14 23:27 | 石垣ゆうじ


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