この夏の四日間の話。(8/8~8/11) 全六話 その⑤
《三日目》
一日遅れで魔女がやって来た。それで全員だ。四人がそろったのはこ四日間
でわずかに四時間だけだった。みんなでどこに行ってなにを見たのか、勿論
すべて憶えている。だけど、そんなことはどうだっていい。車の助手席には人妻
がいて、後部座席に波乗りの男と魔女がいた。なんの違和感もなしに。三人は
松島ビールを回し飲みして、そして笑った。それがすべてだ。
利府街道を仙台駅に向かってはしる。程なくして人妻と魔女が眠りに落ちてい
った。ぼくと波乗りの男はだまってカーラジオから流れてくるジェイムズ・
テイラーの歌声に聴き入っていた。
“・・・・・・牧草の草が茂る夏を、ひたすら待ち侘びながら・・・・・・
月が昇れば火のそばに座り、彼が思いを馳せる女たちやグラスについだビール
のことをやがて犬たちもおとなしくなり、彼は目を閉じて歌を口ずさむ。そっと
静かにだけどはっきりと、まるで誰かに歌いかけてるようにね。こう言っている
んだ。・・・・・・おやすみ、月夜のお嬢さんたち。ねんねしな。スィート・
ベイビー・ジェームズ・・・・・・”
真昼のお嬢さんたちがねんねするなか、ぼそりと波乗りの男はいった。
「いい歌だな」ぼくはひとつうなずくと「ですね」と答えた。
■
(文=石垣ゆうじ)
一日遅れで魔女がやって来た。それで全員だ。四人がそろったのはこ四日間
でわずかに四時間だけだった。みんなでどこに行ってなにを見たのか、勿論
すべて憶えている。だけど、そんなことはどうだっていい。車の助手席には人妻
がいて、後部座席に波乗りの男と魔女がいた。なんの違和感もなしに。三人は
松島ビールを回し飲みして、そして笑った。それがすべてだ。
利府街道を仙台駅に向かってはしる。程なくして人妻と魔女が眠りに落ちてい
った。ぼくと波乗りの男はだまってカーラジオから流れてくるジェイムズ・
テイラーの歌声に聴き入っていた。
“・・・・・・牧草の草が茂る夏を、ひたすら待ち侘びながら・・・・・・
月が昇れば火のそばに座り、彼が思いを馳せる女たちやグラスについだビール
のことをやがて犬たちもおとなしくなり、彼は目を閉じて歌を口ずさむ。そっと
静かにだけどはっきりと、まるで誰かに歌いかけてるようにね。こう言っている
んだ。・・・・・・おやすみ、月夜のお嬢さんたち。ねんねしな。スィート・
ベイビー・ジェームズ・・・・・・”
真昼のお嬢さんたちがねんねするなか、ぼそりと波乗りの男はいった。
「いい歌だな」ぼくはひとつうなずくと「ですね」と答えた。
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(文=石垣ゆうじ)
by momiage_tea
| 2007-08-17 17:02