『メトロ④を降りれば・・・』② (毎週日曜日更新)
【モンパルナス駅】
まだ青白くひと気もまばらな早朝のパリの街角。オープンテラスで鼾を
かいているご老中は、眠り忘れたカフェーの後で、きっと早起きのカフェ
をみつけては梯子するのだろう。
名画座なのか、なぜこの時期にこの映画がパリで・・・。クリント・イース
トウッドと、彼の実の息子が共演して話題となった『センチメンタル・アド
ベンチャー』の大きな看板が、この街にふしぎと同化しているのだった。
余命いくばくかのカントリー歌手が、甥っ子を引き連れてオーディション
を受けるために聖地(テネシー州)ナッシュヴィルを目指すという、男気
と、ささやかな笑いにみちたロード・ムービーだ。
モンパルナス駅は始発駅。いかにもここから始まるという高揚感が漂っ
ている。天井が高くて教会のような威厳がある。ここで賛美歌でも聴け
たなら鳥肌ものだろう。だけど、とぼくはすぐにも思いなおす。駅には無
口な乗客と最小限の案内放送と、そして列車のいななきがあればそれ
でいいのである。
ぼくとジンはトゥールーズに行くところだ。TGVが走り出すと、すぐに牧草
地が現われた。牛や馬が放牧される、遠くの丘にいっぽんの木がみえる
ところでは、列車から飛び降りたくて仕方がなかった。
ゴーギャンは決してしないが、ゴッホなら飛び降りたかもしれない。ぼくは
ゴッホが好きだけれど、ものの考え方はゴーギャンに近いのかも知れな
い。そういえば学生時代に好んで模写したのはゴーギャンの描いた、『こ
んにちは、ゴーギャンさん』であった。
■
(石垣ゆうじ)
まだ青白くひと気もまばらな早朝のパリの街角。オープンテラスで鼾を
かいているご老中は、眠り忘れたカフェーの後で、きっと早起きのカフェ
をみつけては梯子するのだろう。
名画座なのか、なぜこの時期にこの映画がパリで・・・。クリント・イース
トウッドと、彼の実の息子が共演して話題となった『センチメンタル・アド
ベンチャー』の大きな看板が、この街にふしぎと同化しているのだった。
余命いくばくかのカントリー歌手が、甥っ子を引き連れてオーディション
を受けるために聖地(テネシー州)ナッシュヴィルを目指すという、男気
と、ささやかな笑いにみちたロード・ムービーだ。
モンパルナス駅は始発駅。いかにもここから始まるという高揚感が漂っ
ている。天井が高くて教会のような威厳がある。ここで賛美歌でも聴け
たなら鳥肌ものだろう。だけど、とぼくはすぐにも思いなおす。駅には無
口な乗客と最小限の案内放送と、そして列車のいななきがあればそれ
でいいのである。
ぼくとジンはトゥールーズに行くところだ。TGVが走り出すと、すぐに牧草
地が現われた。牛や馬が放牧される、遠くの丘にいっぽんの木がみえる
ところでは、列車から飛び降りたくて仕方がなかった。
ゴーギャンは決してしないが、ゴッホなら飛び降りたかもしれない。ぼくは
ゴッホが好きだけれど、ものの考え方はゴーギャンに近いのかも知れな
い。そういえば学生時代に好んで模写したのはゴーギャンの描いた、『こ
んにちは、ゴーギャンさん』であった。
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(石垣ゆうじ)
by momiage_tea
| 2007-02-18 00:00