読後、観ないことで見えたもの (10月30日) 

この日、ヴィム・ヴェンダース監督の『ランド・オブ・プレンティ』を観に行かなかった
のは、詩人・長田弘さんの講演(都立図書館主催「文字・活字文化フォーラム)を
拝聴してきたからである。

一冊の本を読み終えた後のような充足感が、新たな記憶をつくることを本能的に
拒んだのだ。長田さんの著作で、ボクの(いつでも取り出せる)愛蔵書となっている
本に『アメリカの心の歌』(岩波新書)がある。

その中に、「読んだ人と読まない人のこころのありようを違えてしまう本がある――」
と書かれた一節があるが、まさにそのことが当てはまるようなお話を聴かせて戴いた。
“読書という読む人と読まない人がいて成立している不確かな文化”こそがこの世で
最古の文化なのは、“人間が読書という行為とおなじく完全ではない生きモノ”だから
なのだという。

ボクなど学生時代はほとんど雑誌しか見なかったけれど、成人してから読書量が
増えてきている。モノを書くようになったのもその頃からだ。ただし、書物から知識を
得て、それなりの人生経験を得てもなおボクは人間として成長するどころか、より一
層不確かな存在になってきているようである・・・。

いずれにしても、ボクが長田さんの本と巡り会い、こうして長田さん本人に出逢えた
ことで、ボクの「こころのありよう」「こころの容量」というものがそれまでとは違えて
しまったのは間違いない。それは不確かな実感であり、不確かな記憶である。

そうしてボクは新しい記憶を詰め込むよりもまず、今こころのなかに仕舞いこんだ
ものを大切にしたかった。講演の後、すっかり暗くなった新宿の街をしばらく彷徨い
歩いていたのだが、この街が綺麗に思えたのは初めてのことだった。

(裕)
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by momiage_tea | 2005-10-30 21:56 | 石垣ゆうじ


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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