夏バテの理由 (7月27日)
「雑誌は物の見方、物の考え方とそのセンスを中心の展開していくべきなのだ。
あるいは、人間の生き方を考えていくマガジン。要はつくる側に哲学がなかった
ら終わりなのだ――」(ターザン山本)
95年2月から約3年ほどつづいたカントリー音楽のミニコミ誌、『ピュア・カントリー』。
当時二十歳かそこらの若造だった編集長時代のボクを取り戻すためだけに、いまの
ボクはもがき苦しんでいるのだ。この数年来、リハビリに明け暮れてきた人生であった
が――ボク自身の世界への――社会復帰のめどはまったくもって立っていない。
あの時のボクには伝えたい明確な事柄や意志や情熱があった。カントリー音楽から
ボクが学んだことは懐の深さと寛容さだ。そうして与えられたものを返そうと、無償の
愛で出来上がったのが『ピュア・カントリー』誌だ。その冊子をめくればわかる。ひとつ
の音楽ジャンルの、出来合いの魅力を伝えるだけのフリーペーパーではないことが。
曲を聴くモノ一人ひとりの歌であるべきカントリー音楽には、それだけに無数のスタイ
ルが存在する。カウボーイの世界だけがカントリー(あるいはカントリー&ウェスタン)
だと思っている大多数の蔑視リスナーが聴けば、これのどこがカントリー音楽なんだ?
と思うような歌やメロディが幾らでもある世界だ。
ボクが『ピュア・カントリー』誌でやりたかったことは、カントリー音楽からハットやブーツ
やブルー・ジーンを剥ぎ取ってしまうことだった。これは別にカントリー音楽の伝統をぶ
ち壊してやろうなどという野心的な意味や陰謀はない(むしろ、ボクはトラディショナルな
部分を大事にしたいと思っている保守派だ)。
そうではなく、正装を脱いで普段着になってから聴こえてくる、自分だけの音楽を大切
にして、育んで、認め合う、分かち合う大切さ、面白さを表現したかったのである。だから
『ピュア・カントリー』誌にはカントリー音楽とまったく関係のないコラムや詩や絵や写真
がたくさん載っていたし、そういう編集方針を貫いてきた。また、読者もそれを支持してく
れていた。
表紙でタイトルの下に「country music & life style」と謳ったのもそうした狙いがあ
ったからだった。だが、あれから7年余り経ったいま、ボクには哲学がない。独自の視点
というより、偏屈な独りよがりがあるだけで、まるで苦いだけで旨味も栄養もないゴーヤ
みたいだ。――これでは夏バテするわけである。
■
(文=石垣ゆうじ)
□
あるいは、人間の生き方を考えていくマガジン。要はつくる側に哲学がなかった
ら終わりなのだ――」(ターザン山本)
95年2月から約3年ほどつづいたカントリー音楽のミニコミ誌、『ピュア・カントリー』。
当時二十歳かそこらの若造だった編集長時代のボクを取り戻すためだけに、いまの
ボクはもがき苦しんでいるのだ。この数年来、リハビリに明け暮れてきた人生であった
が――ボク自身の世界への――社会復帰のめどはまったくもって立っていない。
あの時のボクには伝えたい明確な事柄や意志や情熱があった。カントリー音楽から
ボクが学んだことは懐の深さと寛容さだ。そうして与えられたものを返そうと、無償の
愛で出来上がったのが『ピュア・カントリー』誌だ。その冊子をめくればわかる。ひとつ
の音楽ジャンルの、出来合いの魅力を伝えるだけのフリーペーパーではないことが。
曲を聴くモノ一人ひとりの歌であるべきカントリー音楽には、それだけに無数のスタイ
ルが存在する。カウボーイの世界だけがカントリー(あるいはカントリー&ウェスタン)
だと思っている大多数の蔑視リスナーが聴けば、これのどこがカントリー音楽なんだ?
と思うような歌やメロディが幾らでもある世界だ。
ボクが『ピュア・カントリー』誌でやりたかったことは、カントリー音楽からハットやブーツ
やブルー・ジーンを剥ぎ取ってしまうことだった。これは別にカントリー音楽の伝統をぶ
ち壊してやろうなどという野心的な意味や陰謀はない(むしろ、ボクはトラディショナルな
部分を大事にしたいと思っている保守派だ)。
そうではなく、正装を脱いで普段着になってから聴こえてくる、自分だけの音楽を大切
にして、育んで、認め合う、分かち合う大切さ、面白さを表現したかったのである。だから
『ピュア・カントリー』誌にはカントリー音楽とまったく関係のないコラムや詩や絵や写真
がたくさん載っていたし、そういう編集方針を貫いてきた。また、読者もそれを支持してく
れていた。
表紙でタイトルの下に「country music & life style」と謳ったのもそうした狙いがあ
ったからだった。だが、あれから7年余り経ったいま、ボクには哲学がない。独自の視点
というより、偏屈な独りよがりがあるだけで、まるで苦いだけで旨味も栄養もないゴーヤ
みたいだ。――これでは夏バテするわけである。
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(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea
| 2005-07-27 03:17