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アルバム“twin fiddles”より⑨ (毎週水曜日更新)

 【思い出づくり】

 いつもと変わらぬ雑踏が やけに錆びれてみえる
 だれもが肩をすぼめ 街がため息に包まれている
 すべてが思い出づくりの毎日で
 きみまで思い出になってしまいそう

 いつもと変わらぬ仲間が やけに優しくしてくれる
 だれもが身を硬くして 引き止める者もいないこの街で
 すべてが思い出づくりの毎日で
 きみまで思い出になってしまいそう

 いつもと変わらぬ部屋で ちがう暮らしが始まっている
 だれもが見知らぬ同士 ぼくときみも他人同士なの?
 すべてが思い出づくりの毎日で
 きみまで思い出になってしまいそう
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-28 23:17

『きっとじぶん自身に宛てた手紙』⑩ (毎週月曜日更新)

 “ ――それから、歌をつくりはじめる。だが、ソングライターの夢と
  ひきかえに、離婚。妻が娘とともに去って、孤独になってはじめて
  わかったと、のちにクリストファソンは言った。自由とは、もう失う
  ものが何もないということだ。 ” (長田弘『アメリカの心の歌』)

 

 まったくクリス・クリストファソンは正しい。けれども、『ミー・アンド・
 ボビー・マッギー』で彼が歌った「何もないということは、何もないと
 いうことじゃない。それが、自由なんだ。まったくいい気分だった」
 という言葉に、ぼくはいまは賛同できない。

 何かを背負った人生は確かにつらい。つらいけれども背負うもの
 がない人生というのは無意味で空虚な人生でしかないのではない
 か。そう、きみに気づかされた。

 どうせ結末が同じならば、投げやりになるのはよそう。今まで共に
 歩んできた道に対して、それはフェアじゃない。だから、互いへの
 思いやりと尊敬までを失ってはいけない。

 きみのぼくをみつめる瞳に情熱がなくなってしまっても、構わない。
 それはぼくのせいなのだから。でも、ぼくは最後の日まで、きみと
 きみとぼくとを背負っていようと思う。「もう失うものがなにもない」
 自由なんて糞喰らえだ。ぼくは一生なにかを背負いつづける。
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-26 00:00

『メトロ④を降りれば・・・』③ (毎週日曜日更新)

【マダムと褐色の男】

キャフェタバにはその街しか知らない、でもその街のことならなんでも
知っているマダムがいる。見慣れない人種に一瞥を食らわすと、マダム
はタバコを吹かして彼女なりの歓迎をあらわした。

ぼくはひと箱いくらの小さな芸術鑑賞をたのしむ。パッケージをいちいち
凝視し、十分に吟味したのち、甘美でやたらとキツそうなのを選ぶのだ。
愛煙家へのみやげ物を、マダムは怪訝な表情で茶袋へと放り込む。

パリは憂鬱な街だ。いつでもどこでもパリにいることはわかるのに、パリ
のどこにいるのかはわからないのだ。そのとき、ポルトガル人街にいた。
ぼくは定食屋から香る、陽気さにも似た魚介スープの匂いによろめく。

定食屋は花盛りだ。人生のあるところ、それは涙でなく笑顔のあるところ。
あとはきまってワインがあるだけ。昼からやるのが彼らの流儀だ。そんな
光景をぼくはコインランドリーの待合椅子にもたれて眺めているのだった。

手はずの違うランドリー。うろたえるぼくを見かね、ランニング姿の褐色の
男が手をやいてくれた。その無骨な男に差し出したぼくの貧しい硬貨を彼
は受け取らなかった。代わりに彼が受け取ったのはぼくの掌なのであった。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-25 23:18

『ねずみのパンチョとレフティ』② (毎週金曜日更新)

 パンチョは 空にいた。
 大志を抱き、小船を漕いだ。
 月のしずくのランプ照らして、
 柿色の空にだけ潜むという
 コバルトブルーの大魚を
 追っていた。

 レフティは 街にいた。
 ノート片手に、レンガを踏んだ。
 夕陽のワインを飲み干して、
 茜色の街にだけ聴こえるという
 スペクトルの音色を
 追っていた。
(つづく)
 ■
(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-23 22:10

『ひとつ余計なラストパス』④ (毎週木曜日更新)

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                                    (写真=Az)

【続・それぞれのきみへ】

きみは 稜線を眺めていた。
きみは 尾根のむこうを夢想した。
きみは 不安に立ちむかっていた。
きみは 湖を横切るスワンに乗りたかった。
きみは 見知らぬ町での生活を想像した。
きみは 浮かれはしゃいでいたかった。
きみは ただ走るために走りたかった。
きみは ひた延びる道の先へとたどり着きたかった。
きみは 車窓に映るあの娘の横顔を追っていた。
きみは 寝たふりを貫いた。
きみは ダブルシートの密接な会話に花を咲かせた。
きみは 達成感に充たされていた。
きみは じぶんの愚かさを呪った。
きみは 掛け違えたボタンに気づいても後戻りできなかった。
きみは 眠るしかなかった。
きみは 虹を見たのを自分だけの秘密にすることにした。 
きみは 電車でも飛行機でもなく長距離バスを選んだ。
きみは それでもきみだった。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-22 01:39 | 写真

アルバム“twin fiddles”より⑧ (毎週水曜日更新)

【きみを忘れない】

 きみに便りをだしたい それだけのために
 ぼくは旅にでた 異国からの こんにちわ
 とおいとおい国からの 一枚の絵はがきを
 きみは じぶんの町で受けとるだろう

 きみがぼくを忘れても ぼくはきみを忘れない

 ルフトハンザの航空便 それがぼくで
 ぼくは旅にでた 異国からの こんにちわ
 厄介者かもしれない 一枚の絵はがきは
 きみのとある一日に さざなみを立てるはず

 きみがぼくを忘れても ぼくはきみを忘れない

 きみは知るだろう きみを想ったひとりの男が
 とおい旅をして 異国から呼びかけたのを
 きみがぼくにくれた 熱いこころの響きは
 国境を時代を超えて きみの元へと還ってゆく 
 
 きみがぼくを忘れても ぼくはきみを忘れない
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-21 00:00

『きっとじぶん自身に宛てた手紙』⑨ (毎週月曜日更新)

【物書きから絵描きへ】

あのとき、ぼくが書いた即興詩をみて、きみはなにを思っただろう。

  そして 友だちは去りました
  あした会う 友だちは去りました
  引きとめきれずに 友だちは去りました
  去りゆくきみは やっぱり 去りました

  きみの前途は お構いなしに
  ぼくは ただ温もりたくて
  だけどきみは 去りました

あらゆる思惑や勝手な想像はもうやめにする。苦渋の決断であれ、
きみが自分で決めたことだから、ぼくはもうきみを応援するしかない。

きみが「いい波か悪い波か分からないけど、とりあえず乗ってみる」
といったとき、ぼくはきっと大丈夫だと思った。『五十路を超える』とい
うエッセイのなかで、ロバート・ジェームズ・ウォラーはこう語っている。

  “――サーフィンのベテランみたいに、わたしには次に押し寄せ
  てくる波が見える。なかなかみごとないい波だ。乗ってみる価値
  はあるだろう。”


いまいちど、ぼくから詩を贈らせて欲しい。稚拙な詩だけれど、あのとき
のよりはましだと思う。

  笑われてもいい。きみはあざだらけだけど。
  けなされてもいい。きみは強さを増すだけだから。

  打ちのめされたなら、ぼくが癒してあげる。
  だから、もういちど立ち上がるんだ。

  吹けよ嵐、叩けよ雨、
  この世がどうなってしまおうと
  きみの情熱がだれかを温めるはず。

  成し遂げよう。きみの思いを形にするんだ。
  走り抜けよう。きみを遮るものはいない。
 
  窮地に陥ったなら、ぼくが助けてあげる。
  だから、もういちど立ち上がるんだ。

  吹けよ嵐、叩けよ雨、
  この世がどうなってしまおうと
  きみの情熱がだれかを温めるはず。

不甲斐なく風邪をこじらせてしまった。あのとき得たインスピレーション
も大切だけれど、物書きも絵描きも筆を握れなくなったら仕舞いだから、
きみもくれぐれも健康には留意するように。また近いうちに会おう。
かたい握手を送る。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-19 19:18

『メトロ④を降りれば・・・』② (毎週日曜日更新)

【モンパルナス駅】

まだ青白くひと気もまばらな早朝のパリの街角。オープンテラスで鼾を
かいているご老中は、眠り忘れたカフェーの後で、きっと早起きのカフェ
をみつけては梯子するのだろう。

名画座なのか、なぜこの時期にこの映画がパリで・・・。クリント・イース
トウッドと、彼の実の息子が共演して話題となった『センチメンタル・アド
ベンチャー』の大きな看板が、この街にふしぎと同化しているのだった。

余命いくばくかのカントリー歌手が、甥っ子を引き連れてオーディション
を受けるために聖地(テネシー州)ナッシュヴィルを目指すという、男気
と、ささやかな笑いにみちたロード・ムービーだ。

モンパルナス駅は始発駅。いかにもここから始まるという高揚感が漂っ
ている。天井が高くて教会のような威厳がある。ここで賛美歌でも聴け
たなら鳥肌ものだろう。だけど、とぼくはすぐにも思いなおす。駅には無
口な乗客と最小限の案内放送と、そして列車のいななきがあればそれ
でいいのである。

ぼくとジンはトゥールーズに行くところだ。TGVが走り出すと、すぐに牧草
地が現われた。牛や馬が放牧される、遠くの丘にいっぽんの木がみえる
ところでは、列車から飛び降りたくて仕方がなかった。

ゴーギャンは決してしないが、ゴッホなら飛び降りたかもしれない。ぼくは
ゴッホが好きだけれど、ものの考え方はゴーギャンに近いのかも知れな
い。そういえば学生時代に好んで模写したのはゴーギャンの描いた、『こ
んにちは、ゴーギャンさん』であった。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-18 00:00

『ねずみのパンチョとレフティ』① (毎週金曜日更新)

ちっぽけな ぼく。 ちっぽけな きみ。
だけど ぼくを、 だけど きみを、
想ってくれる ひとがいる。

それだけで ぼくは、 それだけで きみは、
がんばれるんだ。

パンチョはきみで、 ぼくがレフティ、
ふたりは いっしょに 旅にでる。
2本に別れた道を べつべつに 歩いて・・・。

【パンチョの詩】:
  きょうみた光は きのうの夕焼け
  きょうみた光は あしたの夕焼け
  きょうのあの光をみた者は、
  いつか満月に照らされる トルファン
  の分叉点でまた肩をたたきあうだろう

【レフティの詩】:
  朝日といい 夕日といい
  変わらぬ無人の街角に
  夢の残骸か 夢見ごこちの現実か
  だれかがそこで 息をひそめてる
  眠気ざましか くたびれ果てたか
  夜の窓辺のベッドに 伸びひとつ
(つづく)
■ 
(文=石垣ゆうじ)
(【パンチョの詩】=TOMOt)
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by momiage_tea | 2007-02-16 23:56

『ひとつ余計なラストパス』③ (毎週木曜日更新)

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                                    (写真=Az)

【ショコラテな日々】

 忘れられてゆく記憶を 
 机のうえにおいてみた
 封を切らずに見守った

 見えてきたのは 苦悩の日々か?
 見えてきたのは 後悔の日々か?
 見えてきたのは 散々な日々か?

 苦味にみちた 日々は 
 それでも 掛け替えのない
 きみの大切な 日々だった

 その先に見えるのは ささやかな・・・ 
 その先に見えるのは おだやかな・・・
 その先にみえるのは あたたかな・・・

 苦味にみちた日々は
 それでも 掛け替えのない
 きみの大切な 日々を担ってる
 ■
 (石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2007-02-15 22:36 | 写真


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