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置いてきた絵 (8月30日)

むかしはよく絵を描いたものだった。サッカーに明け暮れて、サッカーをやる
ためだけに学校に通っていた中学校時代も自由選択のクラスは美術を選ん
だものだった。その時に描いたポール・ゴーガンの模作、『こんにちはゴーガ
ンさん』はいまでもボクの一番の仕事だったと断言できる。

冷めた狂気的な月夜の晩に、近所のおばちゃんと挨拶を交わす気ダルそう
な男(ゴーガン)を描いたその作品は、卒業制作として描かれたものだった。
だが、持ち帰るのが面倒だという理由だけでボクはそのお気に入りを学校に
置いてきてしまった。

当時、美術教師は新人と年輩の2人いて、どちらも女性だったが、そのクラス
はルーキー先生の担当だった。中学の三年間で彼女の授業を受けるのは初
めてのことだ。ボクはあまり社交的な性格ではないから、まわりの生徒が若い
女教師を囲んでワイワイやっているときも、ボクはただ黙々と絵筆を揮っていた。

そんな折、巡回にきた彼女がボクに声をかけてきた。絵筆を逆さにし、その先端
に絵の具をつけて描いるのを見て、「イシガキ君は絵心があるわね」というのだ。
ボクはちょうどいい細筆がなかったから、苦し紛れにそうしただけなのに、「絵心
がある」などといわれくすぐったかった。しかし、一方で自尊心を満たされたのは
確かだった。

周囲の仲間は進路も決まり、今さら入学試験や内申書に反映されることのない
美術の授業を、午後の陽だまりのなか白けた気分で過ごしているようだった。
けれどもボクは懸命だった。絵が好きだし、一声かけてくれた若い美術教師に
何かしら報いたいという気持ちもあったのだと思う。そして、それは良く描けた。

ほんとうは持ち帰りたかったその秀作も、仲の良かった友人が「オレはいらない
から置いていく」というものだから、ついボクも同調してしまったのだ。作品の出来
を褒めてくれたルーキー先生のひどく落胆した表情が今でも忘れられない。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2005-08-30 10:21 | 石垣ゆうじ

東京フォーラム  ー出会いの風景ー

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ここ最近すっかり看板絵職人と化していたが、ちと行き詰まりを感じて
東京フォーラム広場で行われていた骨董市に足を運んでみた。
ついに割れてしまった、お茶用の湯冷ましの器を探しに。
偶然(予想していたけど・・)出店していた親友の骨董屋のワゴンが
家路に向かった後の出来事。

北欧アンティークの出店の前でひとりの女の子が
銀細工で縁取られた漆黒石のペンダントを手にたたずんでいた。
買おうかどうかかなり迷っている様子。
きれいな黒髪をした女の子と、深紺色の石と、街路樹の風景
があまりにもぴったりなじんで見えるのに惹かれ足を止めた。
胡散臭さが隠しきれない女主人が、ドイツで仕入れたという
このオニキスの銀細工ペンダントの由来などを
耳障りな口調で説明することが明らかに逆効果となって
女の子はますます迷う。
女主人のアンティーク調の眼鏡が時たま光る。
そこにいかにも物知り顔なおばちゃんも参入する。
女の子はさらに迷う。
(迷うことを明らかに楽しんでるな、このひと・・)

そんなやりとりに聞き耳をたてながら、ちょっとそのペンダントに触らせてもらった。
本物のオニキスかどうかなど僕には判りようがなかったが、
宮崎駿のストーリーに出てきそうな不思議な銀細工文様の施された石は
僕のとなりで迷いに迷う女の子を、自分の主人と決めてたようで
すぐに女の子の手に戻った。
  
 —百年前にドイツの熟練装飾職人の無骨で繊細な手から創り出された私は、運河沿いの小さな工房を出発し、幾人かの胸の上で時を過ごした後、今日ここガラス張りの巨大な建物の麓で女の子の手のひらにおさまる。
 ー有楽町から東京駅までの近道しようとした私は、たまたま偶然通りがかった骨董市で、漆黒色の石がついたペンダントから目が離せなくなる。なにか昔から知っているような感覚・・・。手のひらにのせてみる。
 ー30年後、宝石箱を開けて・・中でも私のお気に入りのこのオニキスを、娘の初デート記念にプレゼントしてあげよう...

「買います!」  僕の勝手な妄想は、凛としたこの言葉で打ち破られた。
ついに女の子が決めたのだった。。
おおっ!僕は心の中で拍手をした。石と女の子に。。
結局、彼女はしっかり値引きしたうえ、米粒大のオニキスのペンダントヘッドをおまけしてもらい帰っていった。
おおおっ!!もう一度僕は拍手をした。石と女の子と女主人に。。。

あの女の子がおばあちゃんになってもあのペンダントつけていたら
うれしいなぁ..
そ〜んな妄想をしながら(別に自分が作った訳でもないのに)帰途についた。

女の子・オニキス・東京フォーラム、、のある風景。
わるくない休日のひとときだった。

あっ、湯冷まし買うの忘れた・・・

(絵&文 トモット)
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by momiage_tea | 2005-08-29 03:50 | TOMOt

『A列車でいこう』を聴きながら・・・ (8月28日)

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いつもとちがう職場の帰り道。偶然みつけた酒屋さんにぶらりと立ち寄る。
居並ぶスコッチやらバーボンやらワインのボトルの魅惑的な美しさといっ
たらない。産地は違えど、みなパリの高級娼婦のような妖艶な気高さに
満ちている。たんなる嗜好品にしておくのはもったいない。

そもそも飲むのではなく、絵の題材になるボトルを探しに店に入ったのだ。
けれども酒の使命は飲まれること。天寿をまっとうさせてやらねば罰が当
たるというものだ。そこで考える。自分が12年物の琥珀色の飲み物にふさ
わしい人間かどうかを。昨日ときょうは頑張ったが、週単位でみるとズボラ
丸出しの生活だ。負け犬、飲むべからず。

例えばワイン。
「ワインはきちんと働いてそれを飲むに値する人々のためのものだ」
そういったのは詩人のシャルル・ボードレールである。

ボクはなにも買わずに酒屋を後にした。酒屋泣かせ、酒屋の敵である。だが、
酒があるからいい人生なのではなく、いい人生があってこその酒なのだ。12
年も樽のなかで寝かされ、はるばる船にのって日本へやってきた彼女(あるい
は彼ら)たちを邪険に扱ってはならない。

ひねくれ者は損をする。アパルトマンの二階の小部屋に涼風が舞い込み、
この秋はじめてスズムシの音を聴いた。リンリン、コロコロと秋虫が鳴くのを
肴にいっぱい飲ったら、さぞかし美味かったことだろう。今宵、ボクは布団に
寝転び、ラジヲから流れる美空ひばりの“ A列車で行こう ”の彼方にトクトク
と注がれるモルト・ウィスキーの香りを夢想するのだった。

(文 石垣ゆうじ)


酒ヲノンデ言霊吐ケ!
ナニヲ躊躇スルコトアロウカ。

□■
(絵 トモット)
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by momiage_tea | 2005-08-28 22:03 | ゆうじ × TOMOt

すべて楽天のショートが悪い。 (8月26日)

西武ライオンズと東北楽天イーグルスの試合を観て
帰ってきてから、日本人とスポーツについて書いたが、
更新寸前で誤まって文章を消してしまった。前にも何
度か同じことがあった。ボクはブログなどやってること
が不思議なくらいのアナクロ人間であるから、本当は
パソコンなんかより誰も読まないノートにえんぴつで
(縦書きで)書いてるほうが合っているのだ。とにかく
ムカついた。ムカついて、イラついて、おもしろくない
から寝る。さよなら。御機嫌よう。

田舎に帰りたい。中学のとき好きだった娘に会いたい。
(石垣ゆうじ)

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by momiage_tea | 2005-08-26 23:43

夏の陰り (8月23日)

ワン公も暑かろうに。遊歩道の先でちょろちょろと駆け回る犬コロの姿
が見える。3~5mの距離をせっせとインターバル・トレーニングに勤し
むワン公が、忙しなく舌を「ハア、ハア」させているのが遠目にもわかる。

飼い主のおばちゃんは木陰で近所の茶飲み友だちと世間話に夢中だ。
話の合間にそろそろと寄ってくるウィリッシュコーギーが、飼い主から
放り投げられるボールを追いかけては、健気に口に加えておばちゃん
に渡している。撫でられるでも、ご褒美の餌を与えられるわけでもない。

犬を見ないで適当にボールを放ったおばちゃんが、20m先を歩いている
ボクを目がけてよこしたのかと思うほど正確なストライク・ゾーンど真ん中
のボールを転がしてきた。そのボールを拾い上げたらいいのか、向かって
くるワン公に任せたらいいものか、ボクは一瞬の判断に迫われた。

突進してくるウィリッシュコーギー。ボールは勢いをキープしたままボク
の1m手前まで転がってきた。ワン公はその刹那、こちらをチラリとみやり
なにかを期待した表情で減速しかけた。しかし、ボクの脳はそれよりも先
に「しゃがむのは面倒だ」と指令を下していた。

あわれなワン公よ。彼はキラキラしたひとみでボールの転がっていった先
と、傍らを通りすぎるボクと、そして飼い主とをかわるがわるに見て、その場
に立ちすくんでいる。相変わらずおしゃべりをつづけるおばちゃんの頭上で
はセミが夏の悪あがきのようにむせび鳴いていた。

(石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2005-08-23 12:14 | 石垣ゆうじ

ビュフェと浪速の闘拳 (8月22日)

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フランスの画家、ベルナール・ビュフェ展(損保ジャパン東郷青児美術館。
~8月28日迄)を観た。「芸術とは、花のように絶対に必要なものだ」という
彼の言葉通り、ビュフェの描く作品はそれが花でなくとも――死神や昆虫
や道化師であろうと、あるいはワインの空瓶や無人のマンハッタンであろう
と、みな平等に美しかった。

それとは反対で、美しくないものはどこをどう取り繕ってみても美しくない
ものだ。18歳の早熟の天才ボクサー、亀田興毅(協栄)が、王者ワンミー
チョーク・シンワンチャー(タイ)を3回TKOで下し、見事に東洋太平洋フラ
イ級チャンピオンを奪取した。大したボクサーである。だが、ボクは「浪速の
闘拳」から美しさを感じることはなかった。

物事の好き好きや美的センスは人それぞれである。ましてボクシングは
相手を本気で殺すぐらいの意識がないと自分が惨めにやられてしまう競
技だ。常日頃からビッグマウスを叩いているぐらいで丁度いいのだが、タ
イトル戦の前日の調印式で相手ボクサーと睨み合った亀田はただのチン
ピラでしかなかった。ちっとも格好良くも、美しくもないのだ。

勝負の世界。向かい合った相手の目を見ただけでその実力差がハタから
も判ってしまうことがある。やる前から亀田の勝ちだ。しかし亀田には欧米
のボクサーが興行のあおりとして相手を罵ったりするほど、自分のイキが
った気分をエンタテーメント化することが出来ない。だから相手をただ見下
して、険悪な雰囲気を晒すしかなかったのである。

大一番も終わったことだし、たまには亀田選手もグラブを置いてビュフェの
絵でも眺めてきたらいいのだ。若さはそれだけで美しい。彼の「意気がり」が
「粋がり」に変われば、きっとリングに美しい絵を描ける。

ビュフェは『死よ万歳』という、しゃれこうべ(骸骨)が人間の老人を料理して
しまおうとする絵を描いたけれど、亀田選手にも四角いカンバスの上でそん
な愉快な作品を仕上げてもらいたいものだ。そのとき彼は、アジアではなく
世界のベルトを腰に巻いているのではないか?

(文 石垣ゆうじ)

(絵 トモッと)
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by momiage_tea | 2005-08-22 21:39 | ゆうじ × TOMOt

翌(あす)は秋 (8月21日)

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聴き手の力量不足を痛感させられる音楽があるとすれば、
ジョン・コルトレーンの” GIANT STEP ”がそうだ。こりゃ
やられてしまう。とてももちそうもないと思ってボクはその
アルバムを棚へ戻した。

きのうは人を励ますように光輝いていた月も、今夜は人の
気持ちを惑わすようである。月でピエロが笑っているのだ。
そのままジョン・コルトレーンなど聴き込んでしまったら、
一生涯不眠不休を強いられてしまいそうである。

(文 石垣ゆうじ)





コルトレーンつながりでファラオ・サンダースのサックス聴きながら描いてたら、こんなのが生まれてきました。ヤバイ、フミンフキュウデス・・・

(絵 トモッと)
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by momiage_tea | 2005-08-21 22:44 | ゆうじ × TOMOt

帝釈天 (8月20日)

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東京・葛飾柴又の帝釈天にておみくじをひく。

  <第七十七凶>
 
    願 望  かなわず
    病 人  長びく
    待 人  来らず
    探 物  出でず
    縁 談  不調
    売 買  不利
    其 他  わろし


夏の陽ざしとセミの鳴き声に意識が遠のいた。

(文 石垣ゆうじ)

アナタハエラバレタヒトカモシレナイ・・・

(絵 トモッと)
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by momiage_tea | 2005-08-20 20:18 | ゆうじ × TOMOt

お盆

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今日は昨年亡くなった母親の新盆。

朝早くから親戚一同が集まり、盆棚の飾り付け。
千葉は一宮にてテーラーを営む叔父が
設計図(やたらアバウトな)を懐から広げると
親戚一同即席竹細工職人へと早変わり。

森元首相の背広を仕立てたこともあるという叔父その①。
公務員の傍ら、ネイチャークラフト作家の叔父その②。
書道家の叔父その③。
幼稚園で子供のアイドルな叔母
川越のアンコ屋で働く、喋りだすと止まらなくなる叔母
ばりばりのビジネスマンだが休日は農夫の親父、
そしてちょこっと絵なんか描いてる僕・・・

そんなやたら個性的なメンツが、ああだこうだ言い合いながら
手だけはやたらにてきぱきと動かしている。
外から見ると、何がおっぱじまったんだ、って思うほどの騒ぎ。
僕の仕事は、叔父が今朝5時に山から切りだしてきたばかりの竹数十本から
幅1センチ、長さ20、30、50センチの板を果てしなく作り出すこと。
小鉈で竹をきっちり四等分に縦割ると、あとはひたすらナイフで形を整えてく。
かれこれ300枚は作ってしまった。もう竹職人として食べていけるはず。

午後には、ほうずきや色とりどりの和紙で飾られた
それはそれは立派な竹盆棚が完成した。
千葉は一宮に古来から伝わる伝統的な竹細工らしい。
これはもうみんなで盆棚職人になるか!!夏だけ働いて・・・
なんて言い合いながら昼間っからもう宴会だ。

ふっと盆棚の中をのぞくと、こんな集まりがあると誰よりもよく喋り、
いつも人を笑わせていた母親が、写真の中から楽しそ〜に笑っていた。

(写真&文 トモット)
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by momiage_tea | 2005-08-08 00:51 | TOMOt

絵描きとドブと星

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 ゆっくりと上昇するタバコの煙にかすんで
 22時の遅い一番星が見える


今日は一日、職場の一室を借りきって
看板絵職人となった。
絵を描くことでかろうじて保たれている、か細いオノレの精神だが
今日は絵描きが全く逆効果だった。
なにおオマエは絵なんか描いてるんだ・・・
慣れ親しんだはずの孤独に突然裏切られる。
憔悴すればするほど、しかし筆は動く。
ランナーズ・ハイ、いやペインターズ・ハイといったところ。
気がつくと窓外のビジネス街は大半が明かりを消している。
ようやく先が見えてきた看板絵を後に
屋上でごそごそタバコを取り出し、火をつけると
やっと少し自分がもどってきた


We are all in the gutter,
but some of us are looking at the star
(Oscar Wilde )

ぼくらはみんなどぶの中に住んでいる
でもそこから星を見上げているやつだっているんだ
(オスカー・ワイルド)


                        (絵&文 トモット)
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by momiage_tea | 2005-08-06 02:31 | TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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