カテゴリ:ゆうじ × TOMOt( 234 )

もみあげを見る眼。6月7日(火)石垣ゆうじ記す。

長距離輸送の競走馬が走らなくなるのと一緒で、ぼくも昨夜は
寝不足と移動の疲れでなにも書けなくなってしまった。午前零時
から二時間、どっかりと革張りの椅子に身をもたせかけ、作業机
に向かってはみたものの、ただその端に置かれたマグカップを
重症の麻薬患者よろしくひたすら見つめていただけに過ぎぬ。

庭先ではカエルが歌っていたが、6月の仙台の夜はまだまだ肌
寒い。両親や愛犬ナナと久しぶりに再会し、当たり前のように自
室のベッドへ倒れこむ。ふと天井の木目を見やれば、あの東京
のせわしない喧騒さえも懐かしく思えてしまうのだからやっかい
だ。

きのうの夕方、東京から仙台へ向かう高速バス乗場へと急いで
いたときのことだ。空腹と重い荷物のせいもあり、ぼくは稽古不
足の役者が初日の舞台を迎えたみたいな焦燥感の入り混じっ
た緊張に襲われていた。単に息切れて、動悸が乱れただけかも
知れない。

それでもだ!なんともはや、驚くべきことに、そんなぼくの気持ち
を落ち着け励ましたのは、職場からの1本の電話であった。必要
以上に仕事はしたくないズボラな人間のはずなのに、このときぼ
くは仙台での休暇明けにも、それなりに現場で必要とされている
ことに喜びを感じてしまっていたのだ。やれやれ。

さてと、すっかり出遅れてしまった。試合開始のゴングが鳴り響く
前にお約束の場所へと出かけねばならない。どこえ?それはまた
後日報告できるだろう。アディオス。当欄の読者に幸運を―。


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by momiage_tea | 2005-06-07 17:11 | ゆうじ × TOMOt

もみあげを見る眼。6月6日(月)石垣ゆうじ記す。

TBSの『情熱大陸』は数少ない、好きなテレビ番組のひとつである。まずなんと
いってもナレーションがいいではないか。あの声には真実味そのものがある。扱っ
ているのがうそ偽りのない人間劇場の断片なのだから、そもそも真実味があると
かないとか言ってる方がおかしいのだけれど、終始クールな眼差しを失うことのな
い、程よい抑揚の利いたあの語り口を耳にすると、ボクは否応なしにテレビの前
に惹きつけられてしまうのだ。

ほら!彼が本物の声優である証拠に、ボクは『情熱大陸』のナレーターのその人
の名前を知らないでいる。決して出しゃばることなくきっちりと存在を示しつつ、どこ
までいっても脇役の定位置を守りつづける職人芸――。アニメ映画『シュレック』
の吹き替え版を担当したダウンタウンの浜ちゃんみたく、シュレックなのか浜ちゃん
なのか最後までよくわからない、不本意な二重人格キャラを拝まされたような違和
感など、『情熱大陸』には存在しないのである。

昨夜の主役は女子レスリングで日本にアテネ五輪の金・銀・胴メダルのすべてを
もたらした陰の功労者、栄監督(女子レスリング日本代表及び、中央大学女子
レスリング部)であった。7階級あるうち唯一、世界レベルから劣るとされる67キロ
級の坂本襟(エリ)選手に対する指導ぶりが的を得ていておもしろかった。欧米の
対戦相手に気おくれしてしまい一勝も出来ずにいる彼女に、栄監督は「おまえは自
分が勝っちゃいけないと思って闘っているんだよ!」と諭すように叱咤するのだった。

うんうん、そうなのだ。「勝っちゃいけないと思って」土俵に、リングに、フィールドに脚
を踏み入れることがままあるものなのだ。ボクなんかそれがしょっちゅうだ。申し訳な
いと思いながらモノを書いて生きているのである。卑屈な男だ。根性がいじけている
のである。ん? いや、そうではない。理想が高いので相手が自分にないものを持
っていると、そうではない自分がひどく見すぼらしい存在に思えてきて、勝手に自ら
優越をつけてしまっているのだ。

だが今、ボクは勝負を度外視してモノを書いている。勝負を度外視したところで勝負
をしている者は、勝つことが出来ないのかも知れない。けれど、少なくとも負けること
すらもまた、ないのである。ご清聴ありがとうございました。言葉が無地の平原に小
躍りし始めるまで――もうボクは文学に身を捧げて世を彷徨うばかりだ。




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by momiage_tea | 2005-06-06 02:16 | ゆうじ × TOMOt

もみあげを見る眼。6月3日(金)石垣ゆうじ記す。

生きるうえで不必要、無駄だ、とにかく面倒臭いということがある。
詩人で作家のわが師、チャールズ・ブコウスキーもいっているが、
脚の指の爪を切ることぐらい厄介な行為もないのではなかろうか?

最近観たなかで間違いなく★★★★★評価の映画『サイドウェイ』。
そこで、作家志望のマイルス(ポール・ジアマッティ)が旅先で親友
に裏切られた際、最初に取り組んだのがこの「脚の指の爪を切る」
という作業であった。

「ははぁ~ん」と内心うなり声を上げながら作品を観つづけていると、
物語の後半でこんどマイルスは、自暴自棄に泣き叫びながらチャ
ールズ・ブコウスキーの言葉を引用してみせるではないか!ここま
でくると、ボクは「うふふ」とひとり劇場の暗闇でほくそ笑むしかない。

映画脚本において重要なことのひとつに、セリフは使わず行動だけ
でドラマやキャラクターを語らせるというのがあるらしいが、まさに
『サイドウェイ』はそのお手本となる作品であり、ハリウッドの並居る
大作を抑えてアカデミー賞をかっさらったことも十二分にうなずける
のである。

それはそうと、諸君らの脚の指の爪は伸びきってはいないだろうね?

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by momiage_tea | 2005-06-03 08:30 | ゆうじ × TOMOt

もみあげを見る眼。6月1日(水)石垣ゆうじ記す。

5月29日のTBS「情熱大陸」には、鉄道に造詣の深い政治学者の原武史氏が出ていた。
全国の駅に点在する名物弁当やら立ち食いそば屋を巡り歩いて、その味や店構えに変
化はないかと、暇さえあれば旅して歩くその姿に、原武史氏の根底に眠る少年のよう
な純真さと優しい眼差しがうかがえた。

番組の中で彼は、中央本線の小淵沢駅に降り立つと、一目散に丸太小屋の立ち食い
そば屋をめざし、さっそく天ぷらそばを啜るのであった。その変わらぬ味に安堵と喜び
の笑みをもらす原氏は、駅そばを「残された最期の砦」と表現した。「それがなくなっちゃ
うというのは、自分がどこにいるか分からなくなるということ」だというのだ。

こういう言葉を聞くとボクは嬉しくて堪らなくなってしまう。来週ボクは東京から実家の
ある仙台へ4、5日帰省することを決めたばかりであったのだが、その一番の目的は
愛犬ナナ(柴メス・8才)の散歩をすることなのである。あの猫のような自分勝手な小憎
たらしい可愛さが恋しくて仕方がない。

ナナと夕闇の川内へと出かけていき、東北大学記念講堂の裏手にある「三太郎の小径」
(作家・阿部二郎の功績を称えて設けられた遊歩道)などを駆けていると、何とはなしに
自分の居るべき場所や進むべき道が見えてくるような気がしたものだった。今度ボクが
「三太郎の小径」を歩くとき、その心に去来するものは一体どんなものなのだろうか?
新たな風景は芽吹いているのであろうか? 

ところでナナは「自分がどこにいるか分からなくなる」なんてことがあるのかしらん?


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by momiage_tea | 2005-06-01 12:47 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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