映画『愛を読む人』について


映画はけっして娯楽ではない。映画『愛を読む人』を観てつくづくそう思わされた。
三六歳の女と十五歳の少年の抜きさしならない恋。この映画は「愛」というひとつ
の物語ではなく「恥」というひとつの問題を浮き彫りにした作品だった。

ひとりの女が抱えたある秘密。それは「恥」であり、「恥」を公にできないことによっ
て女は職業も恋愛も生活もすべて投げ売ってしまわねばならなかった。そのこと
で人生の歯車が狂った女はやがて法廷で裁かれる身となる。そしてそこでも「恥」
を覆い隠すことの方を選び取った女は、犯した罪以上の罪をかぶることすら受け
入れてしまうのであった。

法学生としてその裁判を傍聴することとなったかつての少年も、女の秘密に気づき
ながらついぞ異議を唱えるこはしなかった。いや、できなかった。彼は法廷で、その
場の秩序を遵守せざる得ない法学生(=傍観者)という立場を行使することによって
自分自身を守ったのだった。それは真実に背いた「恥」であり、そのことが時代を経
ても褪せることのない「愛」を養った要因でもあったはずである。

映画の中で扱われた「恥」を基準に考えると、どうしてあの女はそこまで「恥」をかく
ことを恐れたのかと勘繰ってしまうのだったが、人には言えない「恥」をたくさん持っ
ているわたし自身に置き換えてみると、「恥」を封印することによって自らの人生を
違えてしまうことも厭わない、その覚悟も理解できるのだった。

コンプレックスや罪の意識の度合いいかんによって、人は他人には思いすごしで
しかないかもしれない爆弾を抱え込んだまま自滅してゆくのである。それは愚かな
被弾なのか? しかしそれを仕込んだのはわたしというよりも、むしろ一個の人間
に宿された宿命なのだと思う。

http://www.aiyomu.com/

(文=いしがきゆうじ)
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by momiage_tea | 2009-06-29 22:39 | ゆうじ × TOMOt


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