映画『レスラー』について


かつての人気プロレスラーがスーパーの総菜売り場で肉やチーズをはかり
売りしている様はもうそれだけで切なく、耳に補聴器をかけた老いぼれ男が
悲哀を滲ませ、それでも健気に生き抜こうと奮闘する姿にはいささかの慰め
と勇気を感じずにはいられない。

この監督(ダーレン・アレノフスキー)は人生の真実を知っていた。――
地方都市の独立団体のプロレス興行を現実のままに描きだし、主演した
ミッキー・ロークの迫真の演技に一層のリアリティを与えていた。あのファ
ン・フェアの客入りの悪さと寒々しさはなかなか描けるものではない! 

落ちぶれたプロレスラー、ランディが自らウエストバッグに入った小銭を
管理しながら販売するサイン色紙やポラロイド写真。あるいはステロイド
漬けでカラダを壊した者や怪我をして車イス生活を余儀なくされたかつて
の仲間たちを盗み見るときのあの眼差し……。

「プロレスは時代の合わせ鏡」だといった古館一郎の名文句が、いま問いと
答えを共にしスクリーンから痛切にあふれ出す。そして、世知辛いこの同時
代に生きるわたしたちの身を鋭く抉(えぐ)るのだ。

わたしは世の中を相手にプロレスをやってやろうと決意したばかりであった
が、自分自身を切り刻んで観衆を満足させるというレスラー稼業に改めて
畏怖を覚えた。ブルース・スプリングスティーンの挿入歌にもあった「それ
以上わたしに何を望むのか?」――という投げ掛けを放れるほど、人は我
が道を生き切れるのだろうか?

THE WRESTLER

(文=いしがきゆうじ)
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by momiage_tea | 2009-06-17 19:41 | ゆうじ × TOMOt


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