往路書簡 ②


絵描きさんへ

レオナール・フジタ展を観てきました。ぼくは宗教画がますます嫌いになりましたよ。
彼の描くイエス様もマリア様もよくわからない取り巻きの聖人達もみんな偽善者に
見えました。嫌悪の塊みたいな顔をして鼻もちならない印象の人物ばかりなのです。

まるで自分の顔を見つめているみたいでぼくはすっかり閉口してしまいました。彼の
描いた小児(画家自身がそう呼んでいました)もみんな口先をとがらせていて、きか
ん坊やおしゃまなチビどもばかりなのです。保母さんをしている中学校の同級生が
自分の園児たちを称して、いみじくも「三〇人の悪魔たち」といっていたのを思い出し
ました。

フジタ画伯の代名詞となっている乳白色の肌色よりもぼくが気を惹かれたのは、彼
がフランスを代表するシャンパン・メーカー「マム」のラベル画を描いていたことです。
「マム」の社長さんはフジタ画伯が洗礼を受けたときに代父を務めたというから、その
親密の度合いが伺えるというものです。それと、彼は絵の制作のときにもシャンパン
を傍らに置いていたのかが気になるところです。 

もうひとつ、日本を捨てなければならずフランスに帰化した彼のご婦人の名が「君代」
というのも因果なものだ、と感じました。彼の祖国への想いは胸の裡にわだかまりの
ような感情と共に終生こびりついて離れなかったのではないでしょうか? さてさて、
ポストカードを何枚か手に入れたのでこの手紙と別に一筆したためてキミに送るとし
ましょう。

それは檻に入れられたライオンとトラの夫婦の絵なのだけれど、ぼくはそのライオン
になりたいと思いましたよ。奴(ライオン)は疲弊した怒りと悲しみを湛えた眼でこちら
をしかと見つめ返してくるのです。奴が物書きだったならきっといいもの書いたに違い
ありません。……それではご報告まで、御機嫌麗しゅう。  (6月3日、16時38分)

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(文=いしがきゆうじ)

(絵=TOMOt)
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http://www.tomomichi-suzuki.com
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by momiage_tea | 2009-06-03 19:56 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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