『きっとじぶん自身に宛てた手紙』⑥
【コロヘ】
元気かい? どこでなにしてる? ひそかにぼくのうしろで
見守ってくれたりするのだろうか?
きみが11年前の節分の日に、風邪をこじらせて逝ってしま
ったとき、ぼくは寄り道してシャナイア・トウェインのいつだっ
て買えるアルバムを買ったところだった。
帰宅すると、きみはまだ温かくて、でもちょっとかたくなって
いた。おやじがぼくの名前をだすと、きみはつらいのに尻尾
をはらはらと振ってくれたそうだね。
きみは家族で、そしていちばんの親友だった。きみと出掛け
る散歩がたのしかった。あの町のほんとうのすばらしさを知
ったのも、きみとの散歩でだった。
けれども、ぼく以上にきみは散歩が好きなくせに、夏の盛り
の――七夕祭りの前夜祭の――花火がけたたましく地鳴り
をあげると、臆病なきみは一目散に帰りたがって、テコでも
うごかなかった。どんなにぼくがなだめても、引っ張っても
ダメだった・・・。
いまさらだけど、お礼をいいいたい。
きみが逝ってしまう数日前、寝たきりになったきみのそばで、
「もういちど散歩にいきたかったなぁ・・・」そう漏らすと、きみ
はその夜、弱々しくふるえる脚を必死にふんばって《散歩に
行こう》と、ぼくをうながしてくれた。
だけどきみはもう走れなくて、たよりなくニ、三歩すすむのが
やっとだった。ぼくが泣きながら、せめてきみのお気に入りの
場所へと抱きかかえてゆこうとすると、きみは不機嫌そうな
声をもらしたっけね。
ぼくはその意地がうれしかった。ありがとう。
いまいるナナを溺愛してるけど、それは勘弁してくれ。それで
も、ぼくのいちばんはいつまでもきみのままだということを、
忘れないでいてほしい。
スリムで、さみしがり屋で、両耳がお辞儀しているきみ――
コロへ。またいつか、いっしょに走ろうな。 (相棒より)
■
(石垣ゆうじ)
元気かい? どこでなにしてる? ひそかにぼくのうしろで
見守ってくれたりするのだろうか?
きみが11年前の節分の日に、風邪をこじらせて逝ってしま
ったとき、ぼくは寄り道してシャナイア・トウェインのいつだっ
て買えるアルバムを買ったところだった。
帰宅すると、きみはまだ温かくて、でもちょっとかたくなって
いた。おやじがぼくの名前をだすと、きみはつらいのに尻尾
をはらはらと振ってくれたそうだね。
きみは家族で、そしていちばんの親友だった。きみと出掛け
る散歩がたのしかった。あの町のほんとうのすばらしさを知
ったのも、きみとの散歩でだった。
けれども、ぼく以上にきみは散歩が好きなくせに、夏の盛り
の――七夕祭りの前夜祭の――花火がけたたましく地鳴り
をあげると、臆病なきみは一目散に帰りたがって、テコでも
うごかなかった。どんなにぼくがなだめても、引っ張っても
ダメだった・・・。
いまさらだけど、お礼をいいいたい。
きみが逝ってしまう数日前、寝たきりになったきみのそばで、
「もういちど散歩にいきたかったなぁ・・・」そう漏らすと、きみ
はその夜、弱々しくふるえる脚を必死にふんばって《散歩に
行こう》と、ぼくをうながしてくれた。
だけどきみはもう走れなくて、たよりなくニ、三歩すすむのが
やっとだった。ぼくが泣きながら、せめてきみのお気に入りの
場所へと抱きかかえてゆこうとすると、きみは不機嫌そうな
声をもらしたっけね。
ぼくはその意地がうれしかった。ありがとう。
いまいるナナを溺愛してるけど、それは勘弁してくれ。それで
も、ぼくのいちばんはいつまでもきみのままだということを、
忘れないでいてほしい。
スリムで、さみしがり屋で、両耳がお辞儀しているきみ――
コロへ。またいつか、いっしょに走ろうな。 (相棒より)
■
(石垣ゆうじ)
by momiage_tea
| 2007-02-03 00:00