『ネーサンとほうきの木』<前> (毎週金曜日更新)
おもい病気だった。病名はわからない。
ときどき あたまがいたくなったり、
ベッドから起きあがれないこともある。
ふさぎこんだ。とおくから西へとむかう
貨物列車の汽笛がきこえてくると、
とびのりたくてたまらなかった。
おひさまがきらいだ。いや、きらい
になったのだ。おひさまが いっぱいの
笑顔で「おはよう」とあいさつしても、
その子はしらぬ顔をよそおった。
その子の名は ネーサンといった。
好きなのは 部屋からみえるいっぽんの
木だけだ。 その木の名はビッグ・ジョンと
いった。
ネーサンはおひさまがビッグ・ジョンの
木陰にかくれてしまうと、ようやく安心
するのだった。
いつのまにか眠った。気づくと外は
嵐になっていた。もう、おひさまは
どこにもみえない。けれどもネーサン
の心はしずんだままだ。
ビッグ・ジョンはなぐりかかる雨風に、
身をよじらせている。ネーサンは
ビッグ・ジョンの根っこがもげて
しまわないかと 気をもんだ。
この日、貨物列車の汽笛はきこえなかった。
でも、かわりにきいたものがある。声だ。
ベッドにもぐりこんでいては けっして
きくことのできない ビッグ・ジョンの声だった。
(つづく)
■
(石垣ゆうじ)
ときどき あたまがいたくなったり、
ベッドから起きあがれないこともある。
ふさぎこんだ。とおくから西へとむかう
貨物列車の汽笛がきこえてくると、
とびのりたくてたまらなかった。
おひさまがきらいだ。いや、きらい
になったのだ。おひさまが いっぱいの
笑顔で「おはよう」とあいさつしても、
その子はしらぬ顔をよそおった。
その子の名は ネーサンといった。
好きなのは 部屋からみえるいっぽんの
木だけだ。 その木の名はビッグ・ジョンと
いった。
ネーサンはおひさまがビッグ・ジョンの
木陰にかくれてしまうと、ようやく安心
するのだった。
いつのまにか眠った。気づくと外は
嵐になっていた。もう、おひさまは
どこにもみえない。けれどもネーサン
の心はしずんだままだ。
ビッグ・ジョンはなぐりかかる雨風に、
身をよじらせている。ネーサンは
ビッグ・ジョンの根っこがもげて
しまわないかと 気をもんだ。
この日、貨物列車の汽笛はきこえなかった。
でも、かわりにきいたものがある。声だ。
ベッドにもぐりこんでいては けっして
きくことのできない ビッグ・ジョンの声だった。
(つづく)
■
(石垣ゆうじ)
by momiage_tea
| 2007-02-02 20:28