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『ある日の手紙』 

里山さんへ

――突然ですが絵本はいいですね。ぼくは漁るようにして絵本を
読んできた経験はないし、それこそコレクションは数冊しかないの
だけれど、なにしろ絵本的な思考というものに魅力を感じるのです。

前にも書いたけれど、ぼくが絵本の物語をつくるときは、いつでも
お得意様である子どもたちに向けて書いている、という訳ではない
のです。勿論、子どもたちにも届けばいいとは思うけれども・・・。

こうした感情の起源(一種ぼく自身が絵本に対して抱いていたコン
プレックス)は、子どもたちばかりでなく大人に対しても向けられて
いる。なぜか?

その疑問を見透かすようにして、詩人の長田弘さんが、ある新聞
記事のコメント「――子どもの本は大人にとって、いま現実逃避の
場として求められ、受け入れられている――」にこう反論しています。

長田さん曰く「・・・もし苦境にぶつかって、(大人が)子どもの本に目
が向くとすれば、それは現実逃避のためでなく、自分の心の空白に
気づいて、子どもの本の経験の欠落を感じてだと思う。子どもの本
が読むものにくれるのは、胸の心棒になる理想主義であって、敗北
主義とは違うからです――」(『子どもの本の森へ』)

そうなのです。仮に子どもに向けて物語をつくったとしても、ぼくには
それが子どもたちへの「媚び」であるように思えてなりませんでした。
飼主にじゃれつく忠犬を、しらけた面持ちで眺めやる草葉の陰のネコ
の気分とでもいいましょうか・・・。

だからといって現実逃避する大人に向けて書くのでもない。そうでは
なくて、「自分の心の空白」を埋めたり、「胸の心棒」になるものを見つ
けだそう、取り戻そうとする行為がぼくにとっての絵本(物語)づくりの
出発点だということです。そのことをぼくは長田弘さんから教わった
のです。

(文=石垣ゆうじ)
by momiage_tea | 2006-07-31 09:49 | 石垣ゆうじ


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