移民の歌が聴こえる (10月25日)
中学校の卒業記念の寄せ書きに、戯曲家の萩原がボクに
宛てて書いてくれた言葉は一言、「超獣になれ!」であった。
「超獣」というのは“インテリジェンス・モンスター”と呼ばれた
新聞記者出身のプロレスラー、ブルーザー・ブロディのニッ
クネームだ。
ブロディとボクの似ているところといえば、気分屋で足首が
細いところと、モノを書くということぐらいであろうか?しかし、
中学生の頃は文章を書いていなかったし、プロレスは好き
だったが、ブロディのファンだと特別公言したこともなかった。
それにボクらが中学を卒業する何年も前に、ブロディはプエ
ルト・リコで仲間のレスラーから刺されて亡くなっていたので
ある。だからどうして萩原がボクに「超獣になれ!」などと書
いて寄こしたのか分からない。まして、萩原はプロレスに興
味はなかったのだから・・・。
分からないが、当時隆盛を誇っていたプロレス界のトップス
ターのなかでも独特な雰囲気と存在感があり、どこか寂しさ
を滲ませたブルーザー・ブロディのあだ名を仰せつかったこ
とは、ボクにとって喜びであった。だから30歳を過ぎた今で
も、その言葉をこうしておぼえているのだろう。
萩原は仙台の高校から東京の大学へ進学し、そのまま東京
の人となった。盆暮れも里帰りしなかった彼と10数年ぶりに
再会したのは、彼が再び仙台に住処を戻した2年前のことだ。
それも束の間、こんどは彼と入れ替わるようにしてボクが東京
へと移ることになったのだった。
そういえばブルーザー・ブロディの入場テーマ曲はレッド・ツェ
ッペリンの“移民の歌”であった。久しぶりに萩原から連絡を
もらったが、どうやら彼はまた東京で本格的に舞台の仕事に
復帰するつもりのようである。彼が上京してきたらボクはその
時、まだ東京にいるのであろうか?またすれ違うのだろうか?
“移民の歌”が聴こえる。
滅びゆく最後の種族の歌が。
遠くからの便りが時を越えて甦る。
あきらめるな、へこたれるな。
お前が沈めばあの輝きも消える。
風に揺らめくロウソクの炎か
あるいは、木枯らしにしぶとく耐える守り柿か。
寄せては返す波のように
“移民の歌”が鳴り響く。
今ではその歌に耳を傾けるものは
あまりにも打ちひしがれている。
■
(裕)
宛てて書いてくれた言葉は一言、「超獣になれ!」であった。
「超獣」というのは“インテリジェンス・モンスター”と呼ばれた
新聞記者出身のプロレスラー、ブルーザー・ブロディのニッ
クネームだ。
ブロディとボクの似ているところといえば、気分屋で足首が
細いところと、モノを書くということぐらいであろうか?しかし、
中学生の頃は文章を書いていなかったし、プロレスは好き
だったが、ブロディのファンだと特別公言したこともなかった。
それにボクらが中学を卒業する何年も前に、ブロディはプエ
ルト・リコで仲間のレスラーから刺されて亡くなっていたので
ある。だからどうして萩原がボクに「超獣になれ!」などと書
いて寄こしたのか分からない。まして、萩原はプロレスに興
味はなかったのだから・・・。
分からないが、当時隆盛を誇っていたプロレス界のトップス
ターのなかでも独特な雰囲気と存在感があり、どこか寂しさ
を滲ませたブルーザー・ブロディのあだ名を仰せつかったこ
とは、ボクにとって喜びであった。だから30歳を過ぎた今で
も、その言葉をこうしておぼえているのだろう。
萩原は仙台の高校から東京の大学へ進学し、そのまま東京
の人となった。盆暮れも里帰りしなかった彼と10数年ぶりに
再会したのは、彼が再び仙台に住処を戻した2年前のことだ。
それも束の間、こんどは彼と入れ替わるようにしてボクが東京
へと移ることになったのだった。
そういえばブルーザー・ブロディの入場テーマ曲はレッド・ツェ
ッペリンの“移民の歌”であった。久しぶりに萩原から連絡を
もらったが、どうやら彼はまた東京で本格的に舞台の仕事に
復帰するつもりのようである。彼が上京してきたらボクはその
時、まだ東京にいるのであろうか?またすれ違うのだろうか?
“移民の歌”が聴こえる。
滅びゆく最後の種族の歌が。
遠くからの便りが時を越えて甦る。
あきらめるな、へこたれるな。
お前が沈めばあの輝きも消える。
風に揺らめくロウソクの炎か
あるいは、木枯らしにしぶとく耐える守り柿か。
寄せては返す波のように
“移民の歌”が鳴り響く。
今ではその歌に耳を傾けるものは
あまりにも打ちひしがれている。
■
(裕)
by momiage_tea
| 2005-10-25 23:26
| 石垣ゆうじ