映画『ツリー・オブ・ライフ』のこと。 (★☆☆☆☆)

人生は瞬く間にすぎる。ひとりの人間の成長はもちろん、いっぽんの木が育つのよりも早い。太古から
営まれてきた地球の歴史のなかでは人類の歴史は一瞬にすぎない。そうして、人びとの暮らしはあま
りにも早急で、その実進歩がない。天地創造の映像美と50年代テキサスのある家族のドラマとを比較
して、監督テレンス・マリックは執拗にそのひずみを描いてゆく。しかし、その映像は脈々と受け継がれ
てきた生命の営み(=神の仕業?)を信望する敬虔な人間たちを嘲笑うかのようだった。はっきりいって
映画を観るわたしたちは、わざわざミジンコの時代にまで遡らなくとも人類の不幸をしっている。

「リアルで自然なパフォーマンス」を心がけたという監督の手腕は子役たちによって証明されている。し
かし、母親が子どもと戯れるシーンなどは嘘臭い。母親は我が子と両手をつないでくるくると回転して
遊んでいるのだが、映像としては美しく、事実そうした光景が母子の愛情の典型的な表現手段だった
としてもあまりに陳腐な演出だった。昨年日本で公開された映画『脳内ニューヨーク』では、ある脚本家
が自分の頭の中に浮かんだニューヨークの街を舞台化して、それを際限なく肥大させてゆくのである
が、この『ツリー・オブ・ライフ』はテレンス・マリックの『脳内ヘブン』と言い換えることができるだろう。

ブラッド・ピットはブラッド・ピッドである必要がなく、ショーン・ペンはショーン・ペンである必要がなかっ
た。同様に、父と子の葛藤、夫婦間の溝、失われた家族と喪失感といった普遍のテーマが、壮大すぎ
るマリックの『脳内ヘブン』と対峙させるほどの物語性がなかったことも不満の要因だ。母は子どもを
連れて家を飛び出すこともできた。息子は親父に復讐すこともできた。現実の世界(50年代の保守的
なテキサス)ではそれが無理だとしても、映画の世界でならもうひと波乱あってもよかったはずだ。だ
が、それがマリックの「リアルで自然なパフォーマンス」なのだろう。神にうつつを抜かすにも程がある。

(次回予告――『木漏れ日の家で』、『カントリー・ストロング・・・・・・』)

『ツリー・オブ・ライフ』公式サイト ⇒
http://www.movies.co.jp/tree-life/

線と行 スマートライン 
http://linemen.exblog.jp/

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2011-08-19 00:00 | ゆうじ × TOMOt


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