映画『メアリー&マックス』のこと。 (★★★★★)

オーストラリアに住むいじめられっこの少女とニューヨークで引きこもりの生活を続ける中年男との、
文通を介した二〇年に渡る心の交流を描いたクレイアニメ――。パーフェクトといってよいこの映画
にあえて難癖をつけるなら、メガネっ子の冴えない少女だったメアリーの声だ。幼いメアリーの声に
は自我が芽生え、ある決意を宿したいじらしいかわいらしさが漂っていたのだが、成長するにつれ、
素っ気ないどこにでもいるひとりの大人の女性の声に変貌を遂げてしまうのだった。はじめその声
(トニ・コレット)の人選に疑問を抱いていたものの、ひとりよがりな内容の本を出版し、大切な文通
相手を傷つけてしまったメアリーの在りようが、現実味を帯びたその声によって、大人であることの
哀しみを嫌でも突きつける狙いがあったのだろう。そう思うと合点がいく。

かたやマックスの声の主はアカデミー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンだ。彼が頭抜けた才能
をひろく知らしめる前に撮られた映画に『ハピネス』という作品があり、彼はそこでなんの釣り餌もな
いテレフォンセックスで自分を慰めるだけの気味の悪い中年男を演じている。本作のでっぷり太っ
て精神を病み、涙を流すことができないマックスという役柄はまさにはまり役であった。ひとりであ
ることの限界と、人と関わることで生じる心の弊害を描いて、それでも他者へのやさしさが自分を支
え、生かしさえするのだという人生のかくれた真実がここにはある。アルコール中毒の母親、ド近眼
で世話焼きの隣人、空想のなかの友だち、どもり屋のお向いさん――個性的な脇役たちにも目が
離せない、専門誌や世間でもっと語られるべき名作だ。

(次回予告――『コクリコ坂から』、『お家をさがそう』・・・・・・)

『メアリー&マックス』公式サイト ⇒
http://maryandmax-movie.com/

線と行 スマートライン 
http://linemen.exblog.jp/

(文=石垣ゆうじ)
[PR]
by momiage_tea | 2011-08-15 00:21 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


by momiage_tea

プロフィールを見る
画像一覧

リンク


■もみあげ亭アーカイブ
もみあげ亭ブログより抜粋した、選りすぐりのストーリをお届けします



■絵日記「TOMOt日和」
絵かきTOMOtの、旅とARTを感じる日々のおこぼれ日記



■木小屋日記(けごや日記)

山形県小国町在住のかご作家・炭焼き職人のブログ




ブログパーツ

カテゴリ

全体
ゆうじ × TOMOt
石垣ゆうじ
TOMOt
写真
TOMOt DesignWork

以前の記事

2012年 08月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 07月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月

タグ

(8)
(6)
(6)
(5)
(3)
(2)
(1)
(1)
(1)
(1)
(1)

その他のジャンル

ブログジャンル

画像一覧

S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30