映画『人生万歳!』について

ノーベル賞受賞まであと一歩届かなかった物理学者のボリス。彼は小学生とのチェスゲーム
でも決して勝ちを譲らないどころか、相手の無策をなじり倒してシタリ顔の偏屈ジイさんだ。あ
る時、彼の住むマンハッタンのアパートへ、南部から家出してきたばかりの小娘メロディが転が
りこむ。頭脳明晰でつむじ曲がり、癇癪持ちでおまけに自殺願望と暗闇恐怖症の発作さえ抱え
るボリスが、オツムは少々足らないけれど、人生を大らかに楽しんでいるメロディをご自慢の博
識ぶりでうまく丸めこんでいるかのように思えたのだったが・・・・・・実は、有り余る才能を持て余
し、物事の欠点しか見ようとしないさみしい男、ボリス当人こそがメロディや周囲の人間たちの引
き起こすドタバタによって、生きる楽しみといえる秘策をひそかに見いだしてゆくのだった。腕の
いい噺家による艶話のように、皮肉と辛辣な言葉をもっともらしく喧伝するボリスの喋りは、聞く
者の溜飲を下げる見事な話芸であった。

・・・・・・アメリカ、ことにニューヨークは「人種のサラダボールだ」といったのは日本画家の千住
博だ。――それまでひとり暮らしだったボリスのアパートには、メロディとやがて彼女の母親と
父親までもがやってくるのだが、ボリスの治外法権の場であるはずの一室では、誰もがみんな
自己を主張し、言い争い、押し合いへしあいしながらも、なぜかしら不思議な調和をみせるのだ。
よその国に乗り込んでやった戦争を「イン・カントリー」と呼び、本国に兵士が帰還すると「バック
・イン・ザ・ワールド」といったアメリカの、この映画はもっともアメリカらしい作品ではないか。ウ
ディ・アレン監督の記念すべき四〇作品目のラブコメディは、そうした傲慢なアメリカを自ら笑い
飛ばし、人生を肯定っできるだけのハッピーエンドに仕上げたことで、監督に勝利をもたらした。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2011-02-06 23:45 | ゆうじ × TOMOt


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