映画『森崎書店の日々』について

この飽食の時代に、果たして東京神保町の古書店街の風景は私たちの目にどのように映るか。
不景気といわれて久しい昨今、それでもありあまるガラクタ市場のようなこの物余りの世の中で、
根強く生きのこる本の街の姿は、本という、自らこころをかたむける仕方でしか決して先には進
まない、きわめてアナログな媒体であることが言いしれぬ魅力になっていることを否定できまい。
(それは電子書籍であってもそうだ)まして本によって異なるのは内容や著者の文体ばかりでは
なく、紙質やフォントといったその書物の有り様がすなわち個性なのであって、それを差し出され
た読者の受け取り方によって増幅する、たくらみのような親しさをもたらしてくれるものだ。(これ
は電子書籍にはない紙媒体の特権だ)

本はきっと、視覚から味わうものなのではなくて、本質的に手触りの文化なのだと思う。映画
『森崎書店の日々』に貫かれているのもまた、そのような手触りのやさしさを大切にして生きて
きた人びとと街の物語だ。本をほとんど読んだことのなかったタカコの失恋と挫折を救ったの
は、神保町で古本屋を営む叔父のサトルだ。サトルは、本屋を巡り、書棚から抜き取られ、や
がてじぶんの指先でページをめくらないことには始まらないタカコという物語の行方を、無理強
いすることなくそっとうながす。私は『森崎書店の日々』のあとにこそつづくタカコの物語に、お
せっかいな思いを馳せながらも、今しばらくこの作品を手の届くところに置いておきたい気持ち
になっている。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2011-01-31 21:37 | ゆうじ × TOMOt


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