ラジオのない夜は

なにもない夜から私はなにひとつ生み出せずにいた。それでブコウスキーを読んでみた。
彼はなにもない夜について書いていた。“七月の雑種の犬のような気分”だと書いていた。
私は二月の負け犬のような気分になった。ぬくんだ身体がみるみる冷めていく。私は寝床
にはいり、半身で、肩を寒さに震わしてこいつを書いている。ノイズまじりのラジオは「How
To」本の著者を招いて他人の心配ごとを議論している。私は鼻をかみ、ちがう局を探した。
シャンソン、J-POP、お笑い芸人の笑えぬおしゃべり、ソウルミュージック。どこのだれも
がわかっちゃいないし、私の望むものを用意してくれてないこともわかっていた。それでも
不愉快だ。つまるところ、私は自分でやらなければならないのだ。生きて、こけて、泣いて、
笑って、自身の映画のバックグラウンドミュージックまで演奏しなければならない。それで
も、巣食われて与えられたものに満足するような人間に成り下がりたくはなかった。レコー
ディングスタジオを押さえて、ミュージシャンへの薄謝を包み、私はようやくそこで一曲吹き
込むのだ。余計なストリングスはいらない。リズムやビートより人間味が欲しかった。伝説
のソングライター、ハーラン・ハワード曰く、「3コードと真実」さえあればそれでいい。しかし、
真実は、そして現実はひどく退屈なものだった。首の皮一枚つながったような気分で、切
羽詰まった思いも封印して、今夜は眠るとしよう。ラジオはなしだ。

(文=石垣ゆうじ)
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by momiage_tea | 2011-01-20 22:25 | ゆうじ × TOMOt


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