『怒りの葡萄』という名の希望

オクラホマの農場一家は土地を奪われ、カリフォルニアを目指す。
行く先々で辛酸を舐め、身を持ち崩していく。ようやくたどり着いた
カリフォルニアの葡萄園でも過酷な労働と搾取がつづくばかりだ。

一家をまとめる青年はそもそも自己防衛とはいえ、殺人を犯して仮釈
放中の身。その上さらに殺しをはたらき逃亡を決意する。残された母親
は最後の気力を振り絞り、それでもこの人生を生きつづけなければなら
ないのだと誓うのだが、あえてそれを口にしなければ、きっと何ら奪われ
るものさえない粗末な暮らしぶりも一瞬にして吹き飛んでしまうのだろう。

古典映画『怒りの葡萄』は、そんな危うい、庶民のかすかな希望を踏み
にじりつづける地主や警察の理不尽な権力を暴いて、同時にそれに抗う
小市民の正義は、法の名のもとに無力でしかないことをあからさまに描い
た名作だ。とはいえ、この優れた作品は私の心に重荷をだけを植えつけ、
ありがちな、もう一度観たいと願う気持ちを根こそぎもぎ取るのだった。

私はこの自身のちんけな人生の断片を小説にまとめあげたばかりだった。
繰り返したくもない戯れ言のような物語は、肝心要の最初の読み手である
私に、『怒りの葡萄』の記憶を蘇らせた。あるいはジョージ・オーウェルの
『葉蘭を窓辺に飾れ』。もしくはジョン・ファンテ『塵に聞け』。

けれども、この身に溜まった膿はだし切らなくてはならないのだ。心に空
いた穴が瘡蓋となり、やがて、私はまたあらたな物語を書き綴るだけだ。
地上げ屋も警官も農場主も、その人から希望を奪うことだけはできない。
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by momiage_tea | 2010-12-14 23:02 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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