終わりと始まりのはざまで・・・。(7月6日)

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このやるせなさ。洗濯をした日は何事もうまくいかない。そういうことになっているのだ。
いまから樋口徹写真展『緋い場所』を見るために銀座へ出かけてくる。うっとうしい迷信
を自ら演出するためにボクは、刑務所あがりの男が、その足で立ち寄った居酒屋の女
主人に手をかけた場所――コノ世ノ“最期”ノ椅子ハアノ世ノ“始マリ”ノ椅子――を拝み
にいく。(・・・・・・それから5時間経過)

その主人を失った廃屋は不気味な気配すらなく、ただ無惨に朽ちるのを待つだけだ。
「オカズガオオイ」――それが最期の食卓の最期の言葉だったという。東北の山里で
長年連れ添った老夫婦の、それまでの日常の在りようが手に取るように伝わってくる。
それだけに哀れみや痛みを越えて、ボクはその写真を見てクスリと小さな笑い声さえ
漏らしてしまうのだった。

ボクは自分がナオミに殺られるところを想像してみた。「ホカニナンカナイノ?」ボクが
いうと、彼女は烈火のごとく怒りを体内に宿し、みそ汁に入れる豆腐のパックを開ける
のに握ったナイフを、ボクの目の前にかざしてみせるのだった。怒っても怖くない彼女
にしてはめずらしく過剰な意思表示だ。ボクはそんな脅しには動じず「オカズガスクナ
イ」と更に吐き棄てる。――それがふたりの最期の食卓の最期の言葉になるのだ。

銀座から池袋に戻り、馴染みのカレー屋に入った。店内に映し出される摩訶不思議
なインド映画にボクは気を奪われた。次に入った喫茶店では「ちょこっとだけ」といい
つつ、いつまでも電子郵便のやりとりに耽こむボクがいた。気づけば、向かいのテー
ブルで蔑ろにされたままのナオミが殺意に満ちた鋭い眼光でこちらを睨んでいた。

あの写真展の情景はぼくにとってはむしろ身近なものなのかも知れない。世の男性
諸君も気をつけて欲しい。まずは他人の忠告に耳を傾けることから始めてはどうだろ
う? それが人生遅延の秘訣になるのだ。

(文=石垣ゆうじ)
(絵=トモッと)
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by momiage_tea | 2005-07-06 23:45 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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