『も』は もみあげ の『も』   by トモッと

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ミレルは団長の指示をはじめて拒みました。

 「さぁ、行けミレル! 行くんだ!」

ミレルがこの河を渉るのはたやすいことでした。

 「わしのいうことが聞けんというのか!」

ミレルは団長との日々を思い返しました。

 「打つぞ、ミレル! 行かんというならばな!」

ミレルは鞭で打たれたことばかり思い出しました。

 「このうすのろめ! こうだ!」

ミレルはそうして、また打たれました。

 「こいつめっ! こうだっ! こうだっ!」

ミレルは鞭打たれたまま、ロシアに降る雪のように泣きました。

 「はぁ~っ、はぁ~っ」団長はみにくく汗をかきながらも・・・。

 「このバカ者がっ! こうだっ! こうしてやるっ!」 と、またミレルを打ちつづけました。

ミレルは団長の心があまりに盲目なので、哀しくてもう一度泣きました。

 <どうして彼には、この河に詩がないことがわからないのだろう?>
 
ミレルはイタリアの作家スザンナ・タマーロの言葉をつぶやかずにはいられなかった。

 『せせらぎは鉄の匂いがする。大地の血の味がする』

なんだと? 団長はいいました。 けれどもミレルは答えませんでした。

 「ど、どこえ行くんだミレル! そっちじゃない! 戻るんだミレル!」

ミレルは決めました。

 「行くんじゃないっ! 戻れっ! 行くなっ! ――ミレルっ!」

その河のせせらぎで水浴びをすれば、きっとカラダのキズも消えるだろう。

 「たのむ行いかんでくれ! わしをひとりにせんでくれっ、ミレルッ!」

ミレルはまるで闇のようなみどり色の河と、団長に別れを告げました。

 「行くな、行くな、行かないでおくれミレル・・・。ミレルっ! このミレルめがっ!」

ミレルの姿はいまや、団長がこれまで見たなかでも一番ちいさなミレルでした。

やがて、団長の目からミレルがいなくなると、

そのひとみには、容赦なくロシアの雪が嵐のようにたたきつけました。



 絵=トモッと
 文=石垣ゆうじ
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by momiage_tea | 2005-07-01 12:09 | ゆうじ × TOMOt


モノ書き石垣ゆうじとモノ描きTOMOt「もみあげ亭」二人による気まぐれ日記


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