覚悟


ジョン・ファンテの『塵に聞け』、あるいはジョージ・オーウェルの『葉蘭を窓辺に飾れ』
――その主人公はどちらも作家前夜の傲岸不遜なダメ男を描いた物語なのだが、
彼らは、自らの正直さを紙上に書き殴るのと同様にして、心を寄せる女の子にさえも
ぞんざいな振る舞いを崩そうとはしなかった。

物語を読みすすめて、はじめ偽りのないその言葉たちが作家の真摯とも思える執拗
なひねくれ具合に、共感と尊敬の念さえ抱かせたものだが、あまりに頑なで、粗雑な
印象をあたえる彼らの生き方が次第に疎ましく、腹立たしいものへと姿を変えて行く
のであった。

それは恋人の女性が男たちに示す忠誠心や優しさによって、より強調されることとな
る彼らの甘えの構造がそのままうだつの上がらないわたし自身の暮らしぶりとぴたり
一致をみせることによって生じる、目を背けたくなるような葛藤によって、だった。

『塵に聞け』を読むとジョン・ファンテが嫌いになり、『葉蘭を窓辺に飾れ』を読めばジョ
ージ・オーウェルが煙たくなる。そして自分が書いたものを読むと……。わたしはこれ
まで多くの戯れ言を書き綴ってきた。自分へも他人へも、そして人生にも世間にも嫌悪
と遺憾の意を表明し続けてきた挙げ句の果てに、ただただ不実だったのだ。

そうしてわたしはいま、窓辺に押し寄せてくるシュプレヒコールの波によって自らの存在
意義を踏みにじられようとしていた。落城は免れまい。しかし我が国の政治家先生たち
の失態を鑑みて、もうジタバタすまいと腹を決めたのだった。これ以上の見苦しい諍い
ごとはたくさんだった。

曝け出すにも覚悟が必要なのだが、“控えめな場所から内面の成熟を待ちつつものご
とを楽しみ、芸術にとってほんとうに大切なものがなにか、華美な外面に惑わされない
真の力がどこにあるかを捉える確かな眼――”(堀江敏幸著『彼女のいる背表紙』)を
養うにも覚悟がいるものだ。

(文=いしがきゆうじ)
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by momiage_tea | 2009-07-18 23:43 | ゆうじ × TOMOt


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